日本に根付く宗教とは

 クリスマスやハロウィン、イースターなど、日本人が楽しんでいる宗教的行事は多い。列記したものはすべてキリスト教に由来する行事だが、日本人がキリスト教徒と呼ばれることはまずないし、仏教徒とも、神道信者とも言い難い。日本人は無宗教と言われることも多い。そこで、実際に生活に根付いている宗教を見ていきたい。

 先述の通り、キリスト教のイベントを楽しむ人は多いが、そのルーツを知らない人は多いだろう。また、それらのイベントを楽しむからと言って聖書を愛読していたり、ミサに参加していたりするわけではないので、キリスト教の考えはあまり根付いていると言えないだろう。仏教に目を向けてみると、日本には各地に寺があり、観光がてらお参りする人が多い。仏教は、紀元前5世紀ごろにネパールでゴータマ=シッダッタによって開かれた宗教である。「四苦八苦」「縁起」「我慢」「諸行無常」など、あまり知られていないだけで仏教に由来する言葉は日本語として多く使われている。また、煩悩をなくすことで苦しみがなくなり、死後は極楽浄土に行けるという考え方も仏教に由来している。そして、魂は死後解脱して一切の苦しみから解放されるか、輪廻転生と言ってまた違う何かに生まれ変わって苦しみを受けるかのどちらかであるという考えがある。「魂が生まれ変わる」という思想は、この輪廻転生に由来する。仏教から伝わる文化としては、北枕を嫌がることが挙げられる。日本では枕を北に置いて寝ることを不吉だとして毛嫌いするが、これは仏陀が入滅(死亡)したときに北を枕にしていたことが由来である。しかし、出家する人や施しを与える人は日本に少ない。タイなどに多いイメージではないだろうか。日本はまた、儒教の影響を強く受けている。儒教は中国の春秋戦国時代に、新しい秩序の一つとして多くの学者が唱えた学問である。孔子が有名な儒家の一人である。儒教の教えには家族や年長者を大切にすることなどが日本に根付いていると言える。また、墓参りの文化も儒教由来のものである。墓参りではご先祖様に手を合わせるが、原始仏教の考えではご先祖様は解脱しているか輪廻転生して他の何かに生まれ変わっているかなので、そこにご先祖様は存在していないということになる。先祖崇拝は、生命の連鎖を重んじる儒教の教えに由来する行為なのである。最後に、神道がある。神社を作り神を祀るのは神道の文化である。

 日本は様々な海外からの文化、宗教をすべてそのまま受容するのではなく、多層的に積み重ねて独自の文化を作り上げてきたと言える。これについて和辻哲郎は、『続日本精神史研究』の中で「日本文化の重層性」と呼んだ。このように、日本には多くの宗教が根付いていると言える。

参考文献

・第一学習社編集部、テオーリア 最新倫理資料集、第一学習社、2017、58-61, 65, 69, 85, 152

・渡部哲治、新倫理新訂版、清水書院、2017、53-56

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