産業連関表を用いる目的について

 旧ソ連の経済学者であるワシリー・レオンチェフは、1973年にノーベル経済学賞を授与された。授与の対象となった論文のタイトルは『投入産出分析の発展と、重要な経済問題に対する投入産出分析の応用』である。レオンチェフが提唱した産業連関と分析方法の概要をまとめてみる。 

 15世紀のフランス人経済学者フランソワ・ケネーにより経済表が作成された。レオンチェフが作成した産業連関表はケネーの経済表を発展させたものである。※1

 ケネーは、重農主義の基礎を築いたのだが、重農主義とは農業国が工業製品の輸出ではなく農産物を徹底的に保護することで利益をあげようという主張である。※2

 1758年にフランスをモデルにおける農業階級・地主階級・商工業階級の3つの間の流通と再生産の過程を示したものである。社会的総資本の循環を会計的に総括し表としたことに、マルクスからは天才的な着想と高く評価された。※3

 つまり、ケネーは国内の主な産業を保護することを主張したのだが、そのためケネー提唱の経済表は国内の部門のみを分析対象にしているのだ。確かに、産業部門が多数になればなるほど複雑化し分析手法の確立も難しくなるであろう。また、当時はグローバルな貿易取引から発生する数値の集計が困難であったろうとも推測される。

 それでは、レオンチェフの提唱した産業連関分析表と分析方法は、ケネーの経済表をどのように発展させたのであろうか。

 産業連関表とは、ある期間内の産業部門相互関と産業部門、最終需要部門の間での財とサービスの循環を集約した表である。各産業部門の投入構造と販路構造を把握できるようになった。創始者の名を冠し、レオンチェフ表と呼ばれることもある。※4

 産業連関分析は、レオンチェフが提唱した分析手法だ。経済体系を産業部門と家計など最終需要部門に分けて産業連関分析表を作り、最終需要を生産するために必要な均衡産出量を求めることができる。産業連関分析が目指したのは、一般均衡理論の経験的適用である。※5

 産業連関表は一般均衡理論の構想に基づいているのだが、これにより一般均衡分析を実践的ではないとする論争に終止符を打つことができたのだ。経済全体の取引関係を記録し、そこから投入係数を求め計算を行うことで派生効果も確認することができるようになったのだ。※6

 日本においては、産業連関表は5年ごとに作成されている。海外取引を産業連関表に落とし込んだ国際産業連関表も存在するのである。※7

※1ゼミナール経済学入門2008年9月8日日本経済新聞社福岡正夫p.78

※2蔭山克秀、大学入試蔭山克秀の政治・経済が面白いほどわかる本、(株)中経出版、2008年、p.202

※3有斐閣経済辞典p.296経済表

※4有斐閣経済辞典p.466 産業連関分析表

※5有斐閣経済辞典p.466 産業連関分析

※6ゼミナール経済学入門2008年9月8日日本経済新聞社福岡正夫p.78

※7総務省 産業連関表とはhttps://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/data/io/t_gaiyou.htm

参考サイトWikipedia『ノーベル経済学賞』

※ノーベル経済学賞受賞者のピックアップのためにのみ参考にしたhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6%E8%B3%9E

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