序論 ジョセフ・バトラー（1692-1752）は、イギリスの神秘主義者、神学者、倫理学者として知られ、特に自己愛と他者への配慮に関する考え方が倫理思想の重要な側面を形成しています。彼の思想は、自己愛が人間の行動の基本的な動機である一方、他者への配慮が道徳的行動を導くために不可欠であると主張することで、自己中心的な利己主義と無関心に対抗します。バトラーは、自己愛と他者への配慮の調和を通じて、倫理的な生活の基盤を築くことを目指しました。本レポートでは、彼の倫理思想における自己愛と他者への配慮の関係を考察し、その調和がどのように実現されるのかを探ります。

本論 バトラーにとって、自己愛は人間の自然な感情であり、自己保存のために必要不可欠なものです。彼はこれを否定することはできず、むしろそれを受け入れることで、自己愛が持つ肯定的な側面を理解することが重要であると説きます。しかし、自己愛は単に自己中心的な欲望にとどまらず、他者との関係においても重要な役割を果たします。バトラーは、自己愛が他者への配慮と結びつくことで、より豊かな人間関係を築くことができると考えました。具体的には、自己愛が他者の幸福を考慮に入れる際に、道徳的な行動が生まれるとします。 さらに、バトラーは「心の構造」に注目し、人間の心には自己愛と他者への配慮を調和させる内なる秩序が存在すると述べています。この秩序は、自己愛が他者への配慮によって制約されることを可能にし、逆に他者への配慮も自己愛によって支えられるという相互作用を生み出します。彼は、道徳的判断がこの調和を反映し、自己愛が他者に対する配慮を促進することによって、真の善が実現されると主張します。 バトラーの倫理思想は、自己愛と他者への配慮の調和を求めるものではありますが、彼はこの調和を実現するために、自己認識や内省の重要性を強調します。自