以下では、法学（Law）の学習や実務で基本となる主要な概念・用語を100個厳選し、簡潔に解説します。公法（憲法・行政法・刑法など）と私法（民法・商法など）、そして実体法と手続法の両面から幅広くカバーしています。学習やリサーチの際の参考にしてみてください。
法学用語100選
- 法学（Law Studies / Jurisprudence）
法や法制度、司法制度などを体系的に研究する学問領域。 - 法（Law）
国家や国際社会が強制力をもって守らせるルールや規範の総称。 - 公法（Public Law）
国家や公共団体と個人の関係、または国家機構内部のルールを扱う分野（憲法・行政法・刑法など）。 - 私法（Private Law）
私人相互の関係を規律する法分野（民法や商法など）。個人や企業間の契約や権利義務が中心。 - 実体法（Substantive Law）
権利・義務の内容を定める法。民法や刑法などが該当し、「何が犯罪か」「どんな契約は有効か」などを規定する。 - 手続法（Procedural Law）
実体法上の権利・義務を具体的に実現するための手続を定める法。民事訴訟法や刑事訴訟法など。 - 法源（Sources of Law）
法としての効力を有する根拠や由来。成文法、判例、慣習法、条理などが挙げられる。 - 立法（Legislation）
国会などの立法機関が法律を制定するプロセス。憲法によって定められる手続に従って行われる。 - 法律（Act / Statute）
国会が制定する成文法。憲法に次ぐ最高位の国内法で、国民に対して遵守義務が課せられる。 - 政令（Cabinet Order）
内閣が制定する命令。法律の委任に基づき、実施細則などを定める。法律に抵触しない範囲でのみ制定可能。 - 省令（Ministerial Ordinance）
各省庁の大臣が制定する命令。法律や政令の委任に基づいて詳細な規定を整備する。 - 条例（Local Ordinance）
地方公共団体（都道府県、市町村）が地域の実情に合わせて制定する法規範。法律に違反しない範囲で制定可能。 - 憲法（Constitution）
国家の根本規範。国の統治組織や国民の権利・義務などを規定し、全ての法は憲法に適合しなければならない。 - 基本的人権（Fundamental Human Rights）
憲法が保障する、人間として当然に有する自由や権利。尊厳や幸福追求の理念が基盤にある。 - 三権分立（Separation of Powers）
立法（国会）・行政（内閣）・司法（裁判所）の三権を分離し、抑制と均衡を図る憲法上の原則。 - 法の下の平等（Equality under the Law）
法適用において、人種や性別などによる差別を認めない原則。憲法が保障する重要な人権の一つ。 - 違憲審査制（Judicial Review）
裁判所が法律や行政行為が憲法に違反しないか判断する制度。最高裁判所は最終判断権を持つ。 - 行政法（Administrative Law）
行政機関の組織や権限、行政手続、国民の権利救済などを扱う公法の一分野。 - 行政行為（Administrative Act）
行政庁が法律に基づいて行う具体的な処分や決定。許可、免許、認可などが典型例。 - 行政手続法（Administrative Procedure Act）
行政手続において、国民の権利利益を保護するために必要な手続や行政庁の義務を定めた法律。 - 行政指導（Administrative Guidance）
行政機関が法律上の強制力を伴わずに、事業者や国民に一定の行動を求める行為。適正な運用が求められる。 - 行政不服審査（Administrative Complaint Review）
行政庁の処分に不服がある場合、行政庁に対し再度判断を求める制度。審査請求が代表的。 - 行政訴訟（Administrative Litigation）
行政処分の違法性や不当性を裁判所で争う手続。取消訴訟、無効等確認訴訟などがある。 - 国家賠償責任（State Liability for Damages）
公務員の違法な行為によって国民が損害を被った場合、国や地方公共団体に賠償責任が生じる制度。 - 刑法（Criminal Law）
犯罪と刑罰を規定する法分野。何が犯罪にあたり、どんな処罰が科されるかを定める。 - 犯罪（Crime）
刑法などが禁じる行為であり、刑罰が科される可能性のある行為。構成要件該当性、違法性、有責性が必要。 - 刑罰（Punishment / Penalty）
犯罪に対して国家が科す制裁。懲役や罰金、死刑などの種類がある。 - 構成要件（Elements of a Crime）
刑法が「このような行為を犯罪とする」と定めた要件。構成要件に該当して初めて犯罪成立の第一段階を満たす。 - 違法性（Wrongfulness / Illegality）
社会的・法的に見て許されない行為であるかどうか。正当防衛など違法性阻却事由があれば違法性は阻却される。 - 有責性（Culpability）
犯罪を行った者を非難できるかどうかの主観的要素。責任能力や故意・過失の有無がポイントとなる。 - 正当防衛（Self-defense）
急迫不正の侵害に対し、やむを得ず相当な範囲で反撃する行為。違法性が阻却され、犯罪とならない。 - 緊急避難（Necessity）
自分や他人の生命・身体・財産を守るため、やむを得ず法益を侵害する行為。相当範囲内なら違法性が阻却。 - 刑事訴訟法（Code of Criminal Procedure）
刑事事件の捜査から公判・判決に至るまでの手続を定める手続法。被疑者・被告人の人権保障も重要なテーマ。 - 捜査（Investigation）
犯罪の事実や犯人を特定するための活動。警察や検察などが強制捜査や任意捜査を行う。 - 逮捕（Arrest）
被疑者の身体の自由を奪う強制処分。逮捕状に基づく通常逮捕のほか、現行犯逮捕や緊急逮捕がある。 - 勾留（Detention）
起訴前や起訴後に、一定期間被疑者・被告人を拘束する手続。身体拘束が長期に及ぶため人権問題とも関係が深い。 - 不起訴（Non-prosecution）
検察官が証拠不十分や訴追の必要なしと判断し、起訴しない処分を行うこと。起訴猶予もこの一種。 - 起訴（Prosecution）
検察官が被疑者を被告人として刑事裁判にかける手続。起訴状が裁判所に提出される。 - 公判（Public Trial）
起訴後に裁判所で行われる刑事裁判の審理。検察官、被告人、弁護人が証拠や主張を争う。 - 無罪推定の原則（Presumption of Innocence）
有罪判決が確定するまでは被告人を無罪と推定する原則。刑事司法の基本理念。 - 民法（Civil Code）
私人間の財産関係や家族関係を規律する基本法。債権、物権、家族法など多岐にわたる。 - 権利能力（Legal Capacity）
権利や義務の主体となる資格。通常、人は出生により権利能力を取得し、死亡により喪失する。 - 意思表示（Declaration of Intent）
法的効果を発生させるために必要な意思を外部に表明する行為。契約の成立や解除などに不可欠。 - 契約（Contract）
当事者間の合意に基づいて成立する法律行為。売買契約、賃貸借契約など多数の類型がある。 - 債権（Claim / Obligation）
特定の相手方に対して、一定の行為を求めることができる権利。逆に債務はその行為をしなければならない義務。 - 債務不履行（Breach of Contract）
債務者が契約上の義務を履行しない、または不完全に履行すること。損害賠償や契約解除の原因となる。 - 不法行為（Tort）
故意または過失によって他人に損害を与える違法行為。加害者は被害者に損害賠償義務を負う。 - 物権（Real Right）
物に対して直接支配・使用・処分する権利。所有権や地上権、抵当権などが代表例。 - 所有権（Ownership）
法律で最も完全な支配権とされる物権。他人に侵害された場合、返還請求や妨害排除請求が可能。 - 抵当権（Mortgage）
不動産を担保とする物権。債務者が債務を弁済しないとき、抵当権者はその不動産から優先的に弁済を受ける。 - 留置権（Right of Retention）
他人の物を占有している者が、債権の弁済を受けるまでその物を留置できる権利。 - 占有（Possession）
物を実力支配している事実状態。取得時効や即時取得などで重要な概念となる。 - 家族法（Family Law）
親族や婚姻、相続など、家族関係に関する規定を扱う民法の一部門。 - 婚姻（Marriage）
法律上有効な手続を経て成立する夫婦関係。相互扶助義務や同居義務などが発生する。 - 離婚（Divorce）
法律上の夫婦関係を解消すること。協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚がある。 - 親権（Parental Authority）
未成年の子を監護・教育し、財産を管理する権利・義務。夫婦が共同して行使するのが原則。 - 相続（Inheritance）
被相続人の死亡により、その人が持っていた財産や負債などを相続人が承継する制度。 - 遺言（Will）
被相続人が死後の財産処分などを指定する意思表示。法律で定められた方式に従わないと無効となる。 - 民事訴訟法（Code of Civil Procedure）
民事事件（契約紛争や不法行為など）を裁判で解決するための手続を定めた手続法。 - 訴えの提起（Filing a Lawsuit）
原告が民事裁判を開始させる行為。訴状を裁判所に提出することで訴訟が始まる。 - 管轄（Jurisdiction）
どの裁判所が特定の事件を扱う権限を有するかを定める規定。土地管轄や事物管轄など。 - 弁論（Oral Proceedings）
裁判官・当事者が口頭で主張や証拠を整理・争点を確認する手続。公開の法廷で行われる。 - 証拠調べ（Examination of Evidence）
当事者が提出する証拠（文書・証人・物など）を裁判所が調べ、事実認定に役立てるプロセス。 - 判決（Judgment）
裁判所が当事者間の争点に対して下す最終的な判断。勝訴・敗訴や請求棄却などがある。 - 控訴（Appeal to the High Court）
第一審判決に不服がある場合、高等裁判所に対して再度の審理を求める手続。 - 上告（Final Appeal to the Supreme Court）
控訴審（第二審）の判決に対し、法令解釈の誤りなどの理由で最高裁判所に上告する手続。 - 和解（Settlement）
訴訟の途中で当事者が互いに譲歩して合意に達し、事件を終局的に解決すること。 - 調停（Mediation）
裁判所や仲介者が間に立ち、当事者同士の合意を目指す手続。家事事件や民事事件で利用される。 - 仲裁（Arbitration）
当事者が合意した仲裁機関や仲裁人に紛争解決を委ね、その判断（仲裁判断）に従う制度。 - 商法（Commercial Code）
商事取引や商人（事業者）に適用されるルールを定める法律。会社法などの特別法も含めて広範囲にわたる。 - 会社法（Companies Act）
会社形態や設立、機関構造、株式・社債などのルールを規定する法律。株式会社など主要形態を扱う。 - 株式会社（Joint-stock Company）
出資者（株主）の有限責任を原則とする会社形態。取締役会や監査役会の制度がある。 - 取締役会（Board of Directors）
株式会社で設置されることが多い経営意思決定機関。取締役数名で構成され、重要事項を決定する。 - 監査役（Statutory Auditor）
取締役の業務執行を監査する役職。会計監査と業務監査を行い、会社の適正な運営をチェックする。 - M&A（Mergers and Acquisitions）
企業の合併や買収の総称。事業拡大や経営戦略の一環として行われる。 - 独占禁止法（Antimonopoly Act）
市場における不当な取引制限や独占的状態を規制し、公正な競争を確保する法律。 - 知的財産権（Intellectual Property Rights）
知的創作活動の成果物を保護し、創作者に一定期間の排他的な権利を与える制度の総称。 - 著作権（Copyright）
文章・音楽・美術など、創作性をもつ著作物を保護する権利。作者に無断での複製などを禁止する。 - 特許権（Patent）
産業上利用可能な発明を保護する権利。出願・審査を経て特許庁が設定登録すると成立する。 - 商標権（Trademark）
商品やサービスを他と区別するマークや名称を保護する権利。登録が必要。 - 国際法（International Law）
国家間や国際機関間の関係を規律する法。条約や国際慣習法、一般原則などが含まれる。 - 条約（Treaty / Convention）
国家間や国際機関との間で締結される国際協定。国内法と異なる手続で発効する。 - 国際慣習法（Customary International Law）
国際社会において長期にわたり反復され、法的確信を伴って認められている慣行。 - 国際裁判所（International Court of Justice / ICJ）
国連の主要司法機関。国家間の紛争を国際法に基づいて解決する。 - 国際刑事裁判所（ICC / International Criminal Court）
集団殺害（ジェノサイド）や戦争犯罪、人道に対する罪などを裁く常設の国際刑事裁判所。 - 人権条約（Human Rights Treaties）
国家が個人の人権保障を約束する国際条約。世界人権宣言や国際人権規約などが代表例。 - 紛争解決手続（Dispute Resolution）
国際紛争を解決するための手続。外交交渉、仲裁、国際司法機関での裁判などがある。 - 労働法（Labor Law）
労働者の保護と労使関係の調整を目的とする法分野。労働基準法、労働組合法などが含まれる。 - 労働基準法（Labor Standards Act）
賃金、労働時間、休暇など労働条件の最低基準を定め、労働者を保護する法律。 - 労働組合法（Labor Union Act）
労働者が労働組合を結成し、団体交渉などを行う権利を保障するとともに、労働組合の活動を規律する。 - 社会保障法（Social Security Law）
年金、医療保険、失業保険など、国民生活を保障する制度に関する法律の総称。 - 消費者法（Consumer Law）
消費者を保護するための法分野。消費者契約法や特定商取引に関する法律などが代表的。 - 消費者契約法（Consumer Contract Act）
消費者と事業者間の契約に関して、契約解除や条項の無効など、消費者保護の規定を設ける法律。 - 個人情報保護法（Act on the Protection of Personal Information）
事業者が取得・利用する個人情報の取り扱いルールや本人の権利を定めた法律。 - 環境法（Environmental Law）
公害対策や自然保護、環境アセスメントなど、環境保全を目的とした法律・規制の総称。 - 税法（Tax Law）
租税の課税要件や手続、納税者の権利義務を規定する法分野。国税・地方税など様々な種類がある。 - 租税法律主義（Principle of No Taxation without Law）
税金は法律に基づいてのみ課されるべきであり、法律なくして課税はできないという原則。 - 司法制度（Judiciary / Judicial System）
裁判所や司法機関の組織・構造を定める制度。裁判官の任用や最高裁判所の構成なども含む。 - 法曹（Legal Profession）
裁判官、検察官、弁護士など法律の専門職。法曹養成は司法試験合格後、司法修習を経て行われる。 - 弁護士（Attorney / Lawyer）
依頼者からの相談や代理業務を担う法曹の一。刑事・民事の各種手続で当事者をサポートする。
おわりに
以上の100の用語・概念は、憲法や行政法・刑法・民法・商法・国際法など、法学の主要領域をカバーしています。法学は社会のルール全般を扱う広大な学問領域であり、個々の項目をさらに深掘りすることで、より専門的・実践的な理解が得られます。ぜひ、これらの基本的な用語から学びを進め、法を通じて社会の仕組みを理解してみてください。
