序論 カルヴァンの神学は、16世紀の宗教改革において重要な役割を果たしました。その中心的なテーマの一つが「恩恵」と「自由意志」の相互作用です。カルヴァンは、神の絶対的な主権と人間の自由意志の関係を深く考察し、これに基づいて教会の教義を形成しました。彼の考え方は、後の改革派思想に大きな影響を与え、また現代のキリスト教徒にとっても重要な議論の対象となっています。本稿では、カルヴァンの神学における恩恵と自由意志の関係を探りながら、その思想がどのように改革派思想の核心を形成しているのかを考察します。

本論 カルヴァンの神学における恩恵の概念は、神の無条件の愛と慈しみを基盤としています。彼は、神の恩恵が人間の救済において不可欠であると強調しました。この考え方は、特に「予定説」によって表現されます。カルヴァンによれば、神は創造の前から人間を救う者と滅ぼす者にあらかじめ選び、これに基づいて恩恵を与えるため、人間の行いや意志に依存しないとされます。このような神の主権は、神がすべてを支配するという改革派の神学の根幹を成しています。 一方で、カルヴァンは自由意志についても重要な見解を持っていました。彼は、人間が罪に堕ちる前は真の自由意志を持っていたと認めますが、原罪によってその自由意志は制約を受けると考えました。人間は罪によって束縛されており、自己の力だけでは救済に至ることができないとされます。しかし、恩恵を受けた者は新たな自由を得るとされ、神の恩恵に応答する形で信仰を持つことが可能になるのです。このように、カルヴァンは恩恵と自由意志の相互作用を通じて、神と人間の関係を深めようとしました。 この恩恵と自由意志の関係は、改革派思想の核心を形成する重要な要素です。カルヴァンの神学は、神の主権と人間の責任を両立させることを目指しており、これが改革派教会の教義や実践に反映されています。特に、信者は神の恩恵を受けることで、神との関係を築き、その中で自由意志を行使することが求められます。このように、恩恵は単なる受動的なものではなく、信者が神の意志に従うための力を与えるものであるとカルヴァンは考えました。