序論 ジョセフ・コンラッドの短編小説『闇の奥』は、19世紀末から20世紀初頭にかけての植民地主義の影響を描いた作品として広く知られている。この物語は、主人公マーロウがアフリカのコンゴ川を遡る旅を通じて、植民地支配の現実や人間の内面的葛藤を描写している。植民地主義は、単に土地や資源の略奪にとどまらず、人間の精神や道徳に深い影響を及ぼすものである。本レポートでは、『闇の奥』における植民地主義の影響と、それが引き起こす人間の内面的葛藤について考察する。

本論 『闇の奥』は、植民地主義がもたらす非人間的な側面を鋭く描写している。物語の舞台であるコンゴは、かつてベルギーのレオポルド二世によって厳しい搾取が行われた地域であり、その背景には植民地支配の残酷さが潜んでいる。マーロウが遭遇する様々な人物や状況は、植民地主義が人間の倫理観や道徳をどのように蝕むかを示している。特に、主人公が出会うカートゥンは、権力と金銭に取り憑かれ、自己中心的な欲望のために他者を犠牲にする姿を通じて、植民地主義の暗い側面が浮き彫りになる。 さらに、物語はマーロウ自身の内面的葛藤をも描写している。彼は、アフリカの自然や文化に触れ、初めて「文明」の概念が相対的であることに気づく。彼の心の中では、植民地主義がもたらす暴力と搾取に対する疑問が渦巻いている。マーロウは、カートゥンの非人間的な行動に対して反発を覚える一方で、彼自身もまたその社会の一部であることを否定できない。彼は、自己のアイデンティティと道徳的信念の間で葛藤し、最終的には「暗闇」に引き込まれていく。このように、物語は植民地主義が個人の内面に及ぼす影響を深く掘り下げている。

結論 『闇の奥』は、植民地主義の影響が人間の内面的葛藤をどのように引き起こすかを見事に描写した作品である。コンラッドは、文明の名のもとに行われる非道な行為を通じて、道徳的な混乱や倫理的なジレンマを浮き彫り