序論 ギリシア＝トルコ戦争（1919-1922）は、第一次世界大戦後の民族主義の高まりと、オスマン帝国の崩壊という歴史的背景の中で展開された重要な出来事である。この戦争は、ギリシアとトルコの間の国境を再構築する試みとして位置づけられ、両国の民族意識を一層強化する契機となった。本レポートでは、民族主義がギリシア＝トルコ戦争に与えた影響と、その結果として生じた国境の再構築が、両国の社会と政治にどのような変化をもたらしたのかを考察する。

本論 ギリシア＝トルコ戦争の背景には、民族主義の高まりがあった。19世紀末から20世紀初頭にかけて、ギリシアでは独立運動が活発化し、オスマン帝国の支配からの解放を求める声が高まった。一方、トルコでも民族意識が芽生え、オスマン帝国の多民族性に対抗する形でトルコ民族主義が形成されていった。これにより、ギリシアとトルコの間に存在する民族的・宗教的な緊張が一層深まり、戦争の引き金となった。 戦争の結果、1919年に始まったギリシアの侵攻は、トルコの抵抗に遭い、1922年にはトルコの勝利に終わった。この勝利は、トルコのナショナリズムを強化し、ムスタファ・ケマル・アタテュルクによる新たな共和国の樹立へとつながった。また、戦争の終結により、ロカルノ条約やローザンヌ条約が締結され、両国の国境が再構築された。これにより、ギリシアとトルコの間の国境は明確化され、民族的な分断が公式に認められることとなった。 しかし、この国境再構築は、単に領土の変更にとどまらず、両国の社会に深刻な影響を与えた。特に、戦争後に実施された人口交換は、数十万人の人々が故郷を追われる結果を招いた。ギリシアからトルコへ、トルコからギリシアへの移住は、民族的アイデンティティの再構築を強制し、両国における社会的緊張を生む要因となった。また、これに伴い、各国の民族的少数派に対する扱いや、文化的交流の制限も問題視されるようになった。