少子高齢化が突きつける公的年金の限界と再設計の課題
序論
日本の総人口は減少を続け、合計特殊出生率は2023年に1.20へと落ち込んだ。一方、65歳以上人口は2024年に3625万人、総人口比29%に達した。賦課方式を基礎とする公的年金は現役世代の保険料で高齢世代を支える仕組みであり、人口構造の急速な変化は制度の持続可能性に直接的な圧力をかけている。本レポートは、①少子高齢化が年金財政に与える影響を定量的に整理し、②現行制度の限界を検証し、③持続可能性を確保するための現実的方策を提示することを目的とする。筆者の主張は「年金制度だけをいじっても問題は解決せず、人口・労働・福祉政策を束ねた包括的再設計が不可欠である」という一点にある。年金は世代間契約であると同時に国家の信認を体現する装置であり、破綻すれば社会連帯そのものが揺らぐ。ゆえに制度改革は財政論にとどまらず、日本社会の将来像を問う行為でもある。