寿命100年時代におけるライフシフトと公的年金の再定義

序論
医療技術の進歩と生活水準の向上により、日本人の平均余命は男女とも80歳台半ばに達し、「人生100年」が現実味を帯びている。従来の年金制度は「20歳から40年間働き、65歳で引退し、残り15年を年金で暮らす」という標準的ライフコースを前提としてきた。しかし超長寿化は働き方・学び直し・家計管理に長期視点を求め、年金制度そのものも“老後の現金給付”から“長寿リスクを社会でどう分かち合うか”へと再定義する必要がある。本レポートは、①ライフコース多様化が年金設計に与えるインパクト、②自助・共助・公助の新たな役割分担、③長寿を資源化する政策オプションを検討し、年金制度を起点に人生100年社会の在り方を描くことを目的とする。主張は「年金を単なる終身給付とみなす発想を改め、学び・就労・資産形成を循環させるライフシフト支援インフラとして再構築すべきだ」という点にある。