「ストレスと向き合うには」
人間は日々、様々なストレスと直面する。心理学ではこのストレスのことを「ストレッサー」と呼び、心身に現れる症状を「ストレス反応」と呼ぶ。しかし、ストレスがあるからと言って、それが直接ストレス反応に直結するわけではない。人間はストレッサーを受けると、ストレスに対する「認知的評価」のあと、ストレスに対処する「コーピング」を行うからである。
認知的評価とは、ストレッサーが自分にとってどれだけ脅威であるか、自分はどれほどうまく対処できるかというものである。この認知的評価によってストレスの強弱が決まる。そして、コーピングとは「ストレスへの対処」のことである。具体的には、どのように向き合うか、誰に相談するか、回避するかなどと考えることである。このストレッサー、認知的評価、コーピングも一連の過程を経て最終的に得られる結果がストレス反応である。身体的な反応であれば、疲労感、緊張感、免疫力の低下などが見られ、精神的な反応では抑うつ、苛つき、不安などが見られる。このストレッサーは必ずしもネガティブな出来事だけでなく、ポジティブな出来事が身体反応を伴わせる場合がある。「結婚」や「進学」といった人生の節目となる出来事である。急激な環境の変化についていけず、体調を崩し、うつ病などの気分障害を発症するというケースも少なくはない。健康な生活を送るためには、このコーピングをうまく行うことでストレス反応を減らす必要がある。コーピングにはポジティブシンキング・ネガティブシンキングや、接近・回避など様々な分類がある。その中で重要なことは「自分にとって効果があるコーピング」を知り、意識することであると考える。つまり、自分はどのようなことをすると心が安らぐか、焦ったときはどのように考えたら良いかをよく理解し行えるようにするのである。学校に遅刻しそうなときは「もう走っても仕方がないから怪我しないように歩こう」、人に嫌味なことを言われたら「今後極力関わるのをやめよう」や「あの人が言っていることが大衆の意見ではない」と思うようにしたりするのである。「嫌な思いをしたから今日はケーキを買って食べようといった、「自分にご褒美をあげる」という方法でも良い。
人や状況は簡単に変えられない。まずは、自分の考え方をよく理解し、心身へのダメージを最小限にすることを意識することでストレス反応が減り、人や環境へ対処する体力を温存することができるだろう。ストレスへの対応は日々の健康維持にも関係する。これらの心と体、両方の健康のためにも、コーピングをうまく行えるように心がけることが大切である。
参考文献
・園田美保 誠信心理学辞典 2020 810-817
・日本精神保健福祉士養成協会 精神疾患とその治療 2016 135-136