人が普段の生活の中で、外部からストレスを受けることは日常茶飯事である。心理的に重い気分となり、日々のパフォーマンスが低下していく。それが続くと、心身だけでなく健康面にも異常が現れ、体調までも崩れていく。このような状態を医学的には「鬱」というのである。これまで治療法として、抗鬱剤の投与が一般的とされてきたが、近年は食事療法が効果的とされている。どのような食事が鬱にいいのか、考察していく。
鬱病とは定義が大変広い。後藤知子氏によると「鬱の診断基準は、「抑うつ気分、興味・喜びの著しい減退、体重減少あるいは増加・食欲減退あるいは増加、不眠または睡眠過多、精神運動性の焦燥、気力の減退、無価値観、思考力・集中力の低下、自殺の思いや行為」のうち、「抑うつ気分」あるいは、「興味・喜びの著しい減退」のどちらかを含む 5 つ以上の項目が 2 週間以上継続していることとされている。」(※1)と述べている。つまりイライラやひどい落ち込みだけではなく、体重や不眠症などの身体面でも異常が出てくるのが鬱の恐ろしいところである。ではこういった鬱の予防ないし回復にはどのような療法がいいのか。それは食事療法の中でも、糖質を抑え、タンパク質や食物繊維をとることが効果的とされている。糖質といえば砂糖を思い浮かべる人も多いが、米やパスタ、うどんなどの炭水化物にも多くの糖質を含んでいる。これらは血糖値を上げやすいのである。身体の中の血糖値が上がると、脳に大きなストレスがかかり、眠気や集中力の低下などをもたらす危険性がある。糖質は血糖値を上げやすいだけでなく、急激に上がるため、血糖値が乱れてしまうのである。そうなると、神経がみだれてしまい、少しのストレスでも鬱になりやすいのである。逆にタンパク質や食物繊維を積極的にとることは、血糖値の急上昇を抑え、脳にストレスを抱えにくくする。そのため、鬱の予防、回復には上記のような食事療法が効果的なのである。
長い間抗鬱剤の治療が行われてきたが、上記のように食事一つで鬱を予防できるとなると、我々の生活面での意識がより必須になってくる。鬱と診断された患者の家族や周囲の人にとって仕事や生活のサポートだけでなく、食事のサポートも今後は必要になることが見込まれるのである。
【参考文献】
※1 栄養素・食品摂取量と、心理的ストレス・抑うつとの関連(https://www.mgu.ac.jp/main/educations/library/publication/seikatsu/no51/51_15-19.pdf)