悪意(malevolence)の意味
一般的な国語辞典によれば、悪意とは「他人を憎み、害を加えようとする気持ち」(デジタル大辞泉)のことである。すなわち、「他人を憎む」…①という条件と「害を加えようとする」…②という条件を同時にみたす気持ちが悪意であるということになる。①だけでは、単に相手を嫌っているだけであって、相手を攻撃しようとまでは思っていないので必ずしも悪意とは言えない。②だけでは、相手を攻撃しようとしているけれども動機が無限定であるため必ずしも悪意とは言えない。たとえば、正義のため、神のために相手に害を加えようとするのは悪意ではない。それらは①のみのものは単に敵意、②のみなのは単に害意である。①または②のいずれかをもつだけでも、自律を重んじるカント的な倫理学においては道徳的な問題をもっていると見なされることになる。他方で、功利主義的な倫理学においては①、②、①かつ②のいずれの場合であっても、未だ実際の行動には移しておらず効用に何ら影響を及ぼしていないことから、道徳的な問題とまでは言えない(帰結主義)。
例文
- 悪意に満ちた眼差しで相手をにらみつける。
- 悪意があると受け取られかねない表現は厳に慎むべきだ。
- 悪意があってやったわけではない。
- 法律用語としての「悪意」は、「法的影響を知っている」という意味であって、日常的に使われる「悪意」とは意味が異なる。