近代経済学において有名な経済理論がある。パレート最適とゲーム理論だ。どちらも複数の利害関係が絡む問題への解を決定する過程を表したものである。両者ともに、人間の意思決定がどのような結果を導き出すかを説明したミクロ経済学に分類される経済理論だ。パレート最適とゲーム理論の共通点と相違点を考察していく。
パレート最適は、イタリアの経済学者パレートが提唱した経済理論である。パレート最適がどのようなものかというと、資源配分に関しての理論である。ある個人がある資源配分に対して有力な配分になると他の個人が不利になる。この場合の、元の資源配分をパレート最適と呼ぶ。つまり、有限な資源を最も効率的に配分している状態を指しているのだ。 ※1
市場において完全競争が行われていることが、パレート最適と判断する前提となっている。現実の経済では完全競争という条件が備わっておらず、そのため最適な資源配分からは程遠いと言えるであろう。※2
パレート最適の概念は全員一致が成立する場合にのみ適応するのであり、その結果、複数の人間の合意を必要とするため価値判断が弱くなることが否めないのである。※3
ゲーム理論は、アメリカの学者であるノイマンとモルゲンシュテルにより大成された経済理論である。ゲーム理論がどのようなものかというと、人間の経済行為に関しての理論であり、相反する利害関係がある人間の行動を究明しようとしたものだ。※4
ゲーム理論は「利己的である」ことが大前提にあり、同時に「合理的である」ことが条件となっている。※5 ゲーム理論の中で最も有名な表題が「囚人のジレンマ」だと考えられる。「囚人のジレンマ」は、2人の囚人の間で行われる意思決定ゲームである。※6しばしば、ゲーム理論について非現実的だとの批判にさらされるが、ケインズ以来の最も重要な経済学の実績、とも評価されているのだ。※7
パレート最適とゲーム理論の共通点は、人間の思惑がどのように経済活動へ影響しているのかを構築したことにあるのだろう。それに対して、パレート最適とゲーム理論の相反する点は、パレート最適は複数の人間の利益が等分になるよう決定され、ゲーム理論は自分の利益を最大化されるよう決定されると考えられるのだ。言い換えるならば、パレート最適は、複数の利害関係者の間の最適解を求めるもので、厚生経済学に応用されるものなのだ。ゲーム理論は、最適確率を求める手段を用いて自己の利益の最大化を計るものであると言えるだろう。
※1 金森久雄/荒憲治郎/森口親司 有斐閣経済辞典第3版株式会社有斐閣1998年1月20日発行 p.993
※2 福岡正 日本経済新聞社 ゼミナール経済学入門 2008年9月8日p.200
※3 福岡正 日本経済新聞社 ゼミナール経済学入門 2008年9月8日p.201
※4 金森久雄/荒憲治郎/森口親司 有斐閣経済辞典第3版株式会社有斐閣1998年1月20日発行 p.308
※5 逢沢明 株式会社かんき出版 ゲーム理論トレーニング 2003年4月18日第4版発行 p.46
※6 逢沢明 株式会社かんき出版 ゲーム理論トレーニング 2003年4月18日第4版発行 p.106
※7逢沢明 株式会社かんき出版 ゲーム理論トレーニング 2003年4月18日第4版発行 p.48