健全財政と国債の発行の関係性

 健全財政とは歳入と歳出が均衡であり、プライマリーバランスが正常である状態を指す。歳入の内訳は租税と印紙収入そして公債金であり、歳出の内訳は社会保障関係費と国債費および地方交付税交付金などとなっている。国債に依存しない、いわゆる

健全財政は可能なのであろうか。日本の財政状態を国債との関係から考察してみよう。

 国債の発行は、国が国債を売ることにより借金することを意味する。財政法によれば、日本において税収入の範囲内で予算を組み国債を発行しないことが原則とされている。これを均衡財政主義と呼ぶ。例外として、社会インフラの整備を目的として発行される建設国債のみ認められている。しかし現実には財政特例法を毎年制定し赤字国債を発行しているのだ。※1

 公共サービスを利用するかしないかに関わらず、公共サービスに必要な資金は租税として徴収される。税収入だけでは賄いきれない不足分を国債や地方債の総称である公債の発行により補わざるを得ないのである。※2

 建設国債には市中消化の原則が働いており、日銀が国から国債を買い取ることが禁止されている。いくらでも紙幣を発券できる日銀には国債を買い取る能力が無限にあるため、市中消化の原則が国債発行のブレーキとなっているのだ。日銀は国から国債を直接買い取る代わりに、市中銀行から国債を間接的に買い取っている。これを日銀の買いオペレーションと呼ぶ。日銀が引き受ける国債は、ドッジ=ライン以後発行されたことが無い。※3

 国債発行の問題点は3つある。将来の負担になること、財政が硬直化すること、クラウディング=アウトの可能性とされているのだ。国債の発行は、税収入が増えなければ次の世代が増税のかたちで負担することとなる。また、予算が国債の返済に充てられると政策的経費が縮小する。これが財政の硬直化だ。最後のクラウディング=アウトとは、市中銀行が国債を買うことで企業へ貸し出せる資金が無くなることである。

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 2022年度の予算では、新規の国債発行額が36兆9260億円となり、内訳を見ると建設国債が6兆2510億円、赤字国債が30兆6750億円となっている。歳入全体に占める国債の割合は34.3%となった。国債の残高は、2022年度末で1004兆4000億円となる見込みである。※5  2022年度予算の歳出は、社会保障・国債費・地方交付税交付金の3つでおよそ75パーセントを占めている。※6

 

 日本政府は、不況とデフレから脱却し経済を回すことで法人税・所得税・消費税からの税収入を増加させ、それらを社会保障費に充当し皆年金・皆保険を維持しようとしている。課税はパーセンテージで行われるため、これ以上税率を上げずに税収入を増加させるには、企業と家庭に収益が増えることで法人税と所得税からの税収入を増やすことだ。更に個人が得た収入で買い物をすることで消費税からの税収入を増加させるしかないのである。

※2ゼミナール経済学入門

2008年9月8日日本経済新聞社福岡正夫

※1※3※4 奥村薫 決定版!倫理、政治・経済の点数が面白いほどとれる本(株)中経出版 2011年6月8日p.338〜p.339  

※5 NHKニュース防災「初の1000兆円超も 国債発行残高と財政の課題」

2022年度予算 初の1000兆円超も 国債発行残高と財政の課題|NHK NEWS WEB
かつては異例だった100兆円超えの当初予算。それが今、当たり前とも言える状況になっています。この間、国債の発行残高は増え続け、今年度末に初めて1000兆円を突破する見通しです。

※6 財務省 「1予算はどのような分野に使われているのか」

これからの日本のために財政を考える
日本の財政の状況を解説する、財務省の特設サイトです。
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