「自然法思想の祖、トマス・アクィナスについて」

「自然法思想の祖、トマス・アクィナスについて」

トマス・アクィナスは、13世紀のイタリアの哲学者・神学者であり、カトリック教会のドクトル・コミュニス(教会博士)としても知られています。彼は『神学大全』や『哲学原理』などの著作を残し、中世哲学やカトリック教会思想に重要な影響を与えました。本稿では、トマス・アクィナスが提唱した自然法思想について考察していきます。

自然法思想とは、人間の理性の働きによって発見される、普遍的かつ常に正しい法律のことです。トマス・アクィナスは、自然法は神の意志に基づく絶対的な法律であり、人間の法律は自然法に従うべきであると考えました。すなわち、自然法は聖書の教えや教会の教義と一致するものであり、神の意志を知るための手がかりでもあるというわけです。

トマス・アクィナスは、『哲学原理』の中で、自然法を五つの原理に基づくものとして提示しています。まず、自己保存の原理です。これは、人間が自らの命を守り、健康を維持するために、あらゆる行動をすることができるということです。次に、種の保存の原理です。人間は、自然の種の保存に尽力することができます。三つ目が、理性による真理の追求の原理です。人間は、思考によって真理を発見することができます。四つ目が、共同生活の原理であり、人間は社会的な動物であるということです。そして、最後に、最高善の追求の原理があります。人間は、神とのつながりを追求することができます。

これらの原理に基づいて、トマス・アクィナスは自然法の規範を導き出しました。たとえば、自己保存の原理から、人間は自己防衛をすることができるという規範が生まれます。また、種の保存の原理からは、人間は婚姻と子育てをすることが求められるという規範が導かれます。自然法に従って生きることで、人間は神の意志に従うことになるのです。

トマス・アクィナスは、自然法について、人間の尊厳を守るためにも重要であると説きました。すべての人間は同じ人間性を持っており、その人間性は神の御心の下に存在しています。したがって、人間は自己の尊厳を守り、互いに尊重しあうことが求められます。

最後に、トマス・アクィナスの自然法思想が今日の社会にどのような意義があるのかを考えてみましょう。自然法は、人間の理性に基づく法律であり、社会の基礎をなすものです。人間は自然法に従うことで、神の意志に従い、自己の尊厳を守ることができます。また、自然法を尊重することで、社会全体がより公正で平和な社会となることができます。したがって、トマス・アクィナスの自然法思想は、今日の社会でも重要な指針として十分に役立つものであると言えます。

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