タイトル:「自由意志と決定論のジレンマ」
序論
自由意志と決定論は哲学界における基本的な問題のひとつである。自由意志とは、人が自由に意思決定をすることができるという考え方のことであり、自己決定能力や自律性といった概念も含まれる。一方、決定論とは、あらゆる出来事は必然的に決まっており、人間もまた自分たちの行動や意思決定にあたっては、必然性に従って動いているという考え方のことである。この2つの概念が矛盾するように見えるが、実際にはどちらか一方を認めると、不都合な問題が生じる。そこで、本稿では自由意志と決定論のジレンマについて考える。
本論
自由意志を認めない立場をとる決定論に対しては、人間が自分たちの命運を自由にコントロールしているという意識や、倫理的責任といった概念が成立しないという問題がある。なぜなら、あらゆる出来事の背後には必然性があるとすると、人間の行動にもたらされる結果も絶対に決まっており、自分たちが何かをすることに意味があるとは言えない。また、認知科学的な見地からも、人間の行動や意思決定には、全ての要素が因果律に従っているということがわかってきており、自由意志を否定する立場が有力視されている。
しかし、自由意志を認めることで起こる問題もある。自由意志を認めた場合、人間が自分たちの行動を自由に決定できるということになるが、そのような自由が無制限に与えられた場合、人間は悪事を働くこともできる。また、心理学や生物学においては、人間の行動には多数の内的外的要因が加わるため、自由意志を認めた上での個人に対する絶対的な責任を負わせることは難しいという問題もありうる。
結論
自由意志と決定論のジレンマは、決定論を認めれば自由意志の概念が崩れ、自由意志を認めれば倫理的な問題が生じるという、二律背反的な問題がある。しかし、両者の間には必ずしも矛盾があるわけではなく、人間の行動は因果律によって動いているが、決定論が全てを支配するわけではない。自由意志は、ある程度制限を受けることによって、倫理的責任を負うことができるようになる。このような考え方に基づいて、人間の行動に対する個人の責任を明確に定めつつ、人間の行動に影響を与える内的外的要因にも目を向けることが重要であると言える。