『ケインズ経済学の重要性と問題点』
近代経済学の礎となったマクロ経済学の開祖として知られるケインズ。彼は、経済学の中でも特に政策的原理に関心を寄せ、市場の自己調整機能に明確な限界があることを指摘し、政府が積極的な介入を行い、失業や不況を打開する必要性を主張していました。ケインズ経済学は、第二次大戦後の欧米諸国の復興期や、ニクソンショック以降のインフレーション対策など、経済政策に大きな影響を与え、その理論の重要性は今でも高く評価されています。
ケインズ経済学の最も重要な理論の一つは、『購買力不足説』です。これによれば、景気が低迷を続ける原因は、需要が購買力に達していないことにあり、その解決策は、政府が公共事業の実施や減税などの手段で購買力を増やすことにあるとされています。また、『ケインジアン・クロス』として知られるケインズの簡易モデルでは、国内総生産(GDP)が投資と消費の合計によって決まることが示され、政府投資によって直接的に消費が増え、資本形成によって将来的な消費が増加するとする、大胆な理論構築も行われました。
しかしながら、ケインズ経済学にも問題点が指摘されています。例えば、政府が市場に介入することで、国民の自由な意思決定力が制限されたり、政府の行政能力によって公共事業実施の効率が悪化したりすることがあります。また、得られた財政政策が効果的に働かなかった場合、政府借入金の増加によって過度な国債発行に陥る可能性も考えられます。また、開発途上国では、財政政策を行うための政治的・法的基盤が整っていないことが多く、政策決定の適切性が問われます。
さらに、一般的に、企業の投資意欲や消費者の購買意欲を抑制する根拠となる需要の減退については、ケインズ経済学の理論では十分な説明がなされていません。また、従来の要因分析に基づく経済政策に対して、積極的な政府介入を謳うケインズ経済学が求められるなか、市場メカニズムと政府介入とのバランスを取ることが必要であり、実践的な課題が多いと言えます。
このように、ケインズ経済学においても、これまでに指摘されている問題点は数多くあります。しかし、その考え方が人々の購買力増大に繋がることは間違いありません。逆に、政府が介入しないことによって、貧困層や弱者の不十分な購買力や根本的な格差問題などが深刻化することに注意を払う必要があるでしょう。このような問題を総合的に考える上で、ケインズ経済学の重要性は今なお高く評価され、その重要性が今後も維持されると予測されます。