「ゲーム理論とは何か?―その基本原理と応用例―」
はじめに
現代社会において、我々は日常的に様々な決定を迫られている。その中でも、選択肢が多く、複雑な影響関係が存在する状況下での決定は、より高次の思考力を要求されることがある。こうした問題に対処するために活用される方法の1つが「ゲーム理論」である。本レポートでは、ゲーム理論の基本原理と応用例について紹介する。
ゲーム理論の基本概念
ゲーム理論とは、決定論的な条件下での行動者の選好と行動を分析するための数理モデルである。この「選好」と「行動」が、ゲームにおける行動者間の相互作用に対応する。
ゲーム理論における「ゲーム」とは、2人以上の行動者(プレイヤー)が、互いに影響し合う状況下で行動を選択して得られる利得(報酬)を競うものである。プレイヤーはそれぞれ、戦略を選択することで、ゲームの結果を左右する。
「戦略」とは、プレイヤーがとる選択肢のことであり、それぞれの戦略には対応する利得が存在する。また、ある戦略がとられた場合、相手にどの戦略を選択された場合にどのような利得が得られるかがあらかじめ確定されていることが前提となる。
ゲーム理論の具体例
最もよく知られているゲーム理論の例として、「囚人のジレンマ」というゲームがある。このゲームは2人のプレイヤーが共同で犯罪を計画したと仮定し、互いに自己保身的に行動する場合を考えたものである。各プレイヤーは「自白する」と「黙秘する」の2つの戦略から1つを選択する。自白する場合は、相手が黙秘している場合に比べ、自分自身が軽い刑罰を受けることができる一方で、相手が自白している場合には重い刑罰を受ける。黙秘する場合は、相手の行動に関わらず自分自身が軽い刑罰を受けることになる。
このゲームでの最適戦略はどうなるのだろうか。プレイヤーがそれぞれ自分自身が軽い刑罰を受けることを最小化するように行動する場合、最適戦略はお互いに自白することとなる。しかし、両プレイヤーがこの戦略をとると、どちらも重い刑罰を受けることになってしまう。このように、自分自身にとっての最適戦略を追求すると、逆効果になってしまうような場合を「ナッシュ均衡」と呼ぶ。囚人のジレンマにおいてのナッシュ均衡は、「お互いに自白する」という戦略になる。
このように、ゲーム理論は現代社会における決定問題に活用されている。例えば、競争市場における企業戦略や、選挙戦略などが挙げられる。また、最近ではAI技術を用いた自動運転技術の開発にもゲーム理論が応用されている。
おわりに
本レポートでは、ゲーム理論の基本概念と具体例、さらに応用例について紹介した。ゲーム理論は、現代社会における複雑な決定問題に対処するための一つの手法として、今後ますます重要性を増していくことが予想される。