「カントとは何を主張したのか?-近代哲学におけるカントの重要性-」
はじめに、18世紀末に活躍したドイツの哲学者イマヌエル・カントは、哲学史上において極めて重要な位置を占める存在である。カントが主張した思想は、人間の理性とその限界についての問題を掘り下げ、科学的知識の可能性や、道徳的判断の基礎を明確に示したものである。その思想の中核には、「批判哲学」という視点が採用されており、自明であると受け止められていた様々な認識に疑いを投げかけ、真正性を検証することに重きが置かれている。
本論では、カントが主張した思想について、そのうちの2つの大きな柱である「理性に対する批判的アプローチ」と「自由意志に関する問題」について述べる。
第一に、カントが批判的アプローチを取り入れた背景について考える。彼は、当時の科学的知識に対して疑問を抱いており、単なる経験から得られる知識も限られていることを指摘した。一方、数学が普遍的かつ必然的な知識を与えることができることを見出し、科学的方法における「純粋理性の能力」を重視するべきであると考えた。そこで彼は、「批判的な反省」を通じて、これまであたりまえとされてきた概念や命題について、その真正性を検討し、真理の追究を行うべきだと提唱した。
第二に、カントが考えた自由意志とは、人間が自らの理性に基づいて自由に選択する能力である。彼は、自由意志が道徳的判断に欠かせないものであるとしつつ、これは決定論と矛盾する問題が生じる。一方で、近代科学が支配する現代社会においては、人間に対して自由な選択が与えられているとは言い難く、カントは「道徳的自由意志」という概念を打ち出した。これは、自由な選択を行うこと自体が道徳的に価値があり、自己責任のもとに自己決定をすることが重要であるとするものである。
結論として、カントが主張した思想は、自明であった当時の知識や概念に疑いを抱き、科学の発展とともに人間の本性と限界を考察したものである。特に、「批判哲学」が強調されたことにより、哲学のあり方そのものにも大きな影響を与えた。そのため、カントは近代哲学史上において、途方もない影響力をもつ哲学者の一人として、不朽の名声を築いている。