【序論】
本論文では、「ポストモダニズムにおけるメタフィクションの役割」について考察していく。ポストモダニズムとは、現代社会における近代思想の破綻や消滅を前提とし、それに対する反発や批判の立場を取る思想の一つである。この背景には、現代社会において複雑化・多様化する社会現象や、情報技術の発達によって生じる現象などがあり、それらに対する従来の近代思想の枠組みが適用困難となっていることが挙げられる。一方、メタフィクションとは、小説などの作品の中で、その作品が架空であることを自己言及するような手法を指す。本論文では、このポストモダニズムとメタフィクションの関係を探り、ポストモダニズムにおけるメタフィクションの価値や役割について考える。また、具体的な作品についての分析を通じて、その効果や表現力についても論じる。
【本論】
ポストモダニズムにおいてメタフィクションは、現実と虚構の区別が曖昧になっている現代社会において、作品自体が架空であることを自覚することで現実を描写する手法として広く用いられるようになっている。メタフィクションは、その文学的手法が自己言及を通じて作品自体を問題化することで、読者に対して多義的な解釈を促すことができ、ポストモダニストの立場からすると、現実と架空の境界線を表現的に模索する上で重要な道具となっている。 メタフィクションは、ポストモダニストの作家によって頻繁に使用されており、ジュリアン・バーンズの “Flaubert’s Parrot” 、イタロ・カルヴィーノの “If on a winter’s night a traveler” 、ポール・オースターの “City of Glass” など、多くの作品で使用されている。これらの作品においては、読者が物語と現実を切り替えながら読むことを強いられ、それによって現実と架空の境界線が曖昧になっていることを体感することができる。 また、メタフィクションは単なる文学的手法に終わらず、社会的・政治的な問題にも直結している。ポストモダニズムの立場からは、メタフィクションを通じて、現代社会において真実が曖昧になっていることを問題視している。そしてそれに対する反発として、現代社会における情報技術の普及や複雑化する社会現象に対して、真実と虚構を問わず、自由な思考に基づくアプローチをとることが求められているのだ。 以上のように、ポストモダニズムにおけるメタフィクションは、現実と虚構の境界線を模索するための手法として、文学におけるみだし字や挿絵を含む多様な表現的技法を利用し、その現代的価値を表現することができる。
【結論】
本論文では、ポストモダニズムとメタフィクションの関係を探り、メタフィクションがポストモダニズムにおいて果たす役割や価値について考察した。その結果、メタフィクションは、ポストモダン的な思考の特徴である不確実性や相対主義、歴史の破綻といった問題に対する、批判や反省、あるいは新たな表現手法としての機能を果たすことを示した。また、具体的な作品の分析を通じて、メタフィクションがもつ表現力や効果の多様性についても論じた。これにより、メタフィクションはポストモダン的な思考と創作活動において、重要な役割を果たすことが示唆された。