【序論】
本論文では、フランス哲学界を代表する思想家ジャン＝ポール・サルトルの哲学における「まなざし」について論じる。サルトルは、「まなざし」が我々にとって極めて重要であると主張し、それが人間存在における意味・役割を果たしていると考えていた。 まなざしとは、単純に目の前の対象を見ること以上の意味を持っている。サルトルは、「まなざし」が人間にとって重要なのは、それが自分自身の存在を示してくれるからだと考えていた。つまり、まなざしによって自分が対象となることで自己を発見し、それが自己の本質を把握するための重要な手がかりとなるのだという。 しかし、サルトルは同時に、まなざしを通して自分自身を認識することの困難さも指摘している。まなざしはどこからでも向けられるという無限の可能性を持つため、自己を見つめることが容易ではなく、また、他者のまなざしを受け止めることで自己を見つめることになるため、他者からの評価によって自己像が歪められる可能性もある。 このように、まなざしは人間存在にとって極めて重要な要素でありながら、その意味と役割は複雑である。そこで、本論文では、サルトルが提示したまなざしの哲学を深く考察し、その意味・役割について理解を深めることを目的とする。
【本論】
まず、まなざしの持つ意味について考えてみる。サルトルはまなざしを、対象と自己との関係性における表現と捉えていた。つまり、まなざしは対象を見るだけではなく、自己が存在することを示すものであると考えたのである。このように、まなざしは自己と対象を繋げる架け橋としての機能を持っている。自己の存在意義を理解し、自己の本質を捉えるためには、まなざしと向き合うことが欠かせない。 しかし、まなざしには困難さもある。他者からのまなざしによって、自己像が歪められる可能性があることは、先に述べた通りである。また、まなざしは無数にあり、それらが自己を認識するためには個別に取り扱う必要がある。つまり、まなざしを分析して自己を理解するためには、自己の中にあるまなざしについて理解する必要があるのである。 以上のことから、まなざしは自己と対象を繋げるという重要な役割を持ちながら、自己理解の手段としては容易ではなく、他者のまなざしによっては歪められる可能性があるという複雑な要素を持っていることが分かる。それでも、サルトルはまなざしの重要性を強調し、個人の自己を見出すためにまなざしを向き合うことを推奨していた。その理由は、自己を把握するためには自己のまなざしを理解し、他者のまなざしによる外的影響に左右されない自己像を確立することが不可欠だからである。 こうした背景から、まなざしを理解し、それを通じて自己と対象を結びつけることが、サルトルの哲学における重要なテーマとなっていたことが分かる。まなざしを通じて自己を見出すことができることは、人間存在における意義として極めて大きい。しかし、その逆に自己像が歪められる場合もあることを忘れず、自己のまなざしを理解し、自己像を確立するための取り組みは常に必要である。
【結論】
本論文の結論として、まなざしが人間存在において重要な意味と役割を果たしていることが示された。それは、まなざしによって自己を発見し、自己の本質を把握することができるからである。しかし、まなざしを通して自己を認識することの困難さと、他者からのまなざしによって自己像が歪められる可能性があることが指摘された。サルトルが提示したまなざしの哲学を深く理解することは、自己についての深い洞察と、他者との人間関係をより良いものにするための重要な手がかりとなる。
