【序論】
本論文では、17世紀に活躍したドイツの哲学者イマヌエル・カントの義務論に焦点を当て、自由と道徳的責任の問題を探究する。カントは、人間の本性に備わっている理性に着目し、自由意志や道徳的責任の問題を考えた。彼は自由意志を、必然的な要因ではなく自己決定によって行動を選択する能力と捉え、道徳的責任を、自己決定によって行動を選択する際に、自己の意志によってその行動を制御する必要があると考えた。 しかし、カントはこれらの問題に取り組む上で、非常に厳格な条件を課していた。彼は、自由意志や道徳的責任を、他の人々に影響を与える行動に限定して考えた。また、道徳的責任を果たすためには、全ての人々が同じ道徳的原則に基づいた行動を取る必要があると考えた。これは、カントによる「普遍的立場」の主張であり、個人の欲望や感情に基づく行動ではなく、理性的な道徳的原則に基づく行動が要求されることを意味している。 このようなカントの義務論は、現代の自由意志や道徳の議論においても多くの影響を与えている。特に、自由意志が現代科学によって否定されるなかで、カントの考え方は重要な意味を持つ。また、全ての人々が同じ道徳的原則に基づく行動を取ることを求めることが、個人の自由と矛盾するという批判もあるが、それでもなお、カントの義務論は、道徳的責任という重要な問題を考える上で、私たちに多くの示唆を与えてくれる。
【本論】
カントが提起した自由意志の問題について、一般的には「決定論」と「インドゥーカション」の２つの立場がある。決定論とは、すべての行動が必然的に起こるという理論である。インドゥーカションとは、将来の行動を予測することはできないが、それでも人間が自己決定によって行動を選択することができるという理論である。 カントは、自由意志をインドゥーカション的な考え方で捉えた。彼は、人間が自己決定によって行動を選択する能力を持っていると考えたが、必然的にそのような行動を起こすわけではないという点で、自由意志が決定的な要因ではないと考えた。また、カントは自由意志と道徳的責任を結びつけ、自己決定によって行動を選択する際に、自己の意志によってその行動を制御する必要があるとした。これは、個人の自己決定に基づいた自由な行動に責任を持たせるためである。 カントはまた、「普遍的立場」と呼ばれる理性的な道徳的原則に基づいた行動の重要性を主張した。これは人間の感情や欲求に基づく行動ではなく、実に理性的で普遍的な道徳的原則に基づく行動が求められるということを意味している。ただし、現代においては、「普遍的立場」は攻撃されており、個人が自由を持って行動することを優先する立場が主流となっている。 カントの義務論は、現代の自由意志や道徳の問題についても多大な影響を与えている。カントの考え方は、現代の科学や哲学にも重要な示唆を与えている。特に、自由意志におけるカントの立場は、現代の科学によって否定される可能性があるが、カントの道徳論における重要性は依然として認められている。
【結論】
本論文では、カントの義務論において自由意志と道徳的責任の問題を考察し、その厳格な条件について検討してきた。カントは、人間の理性に着目し、自由意志を自己決定によって行動を選択する能力と捉え、道徳的責任については全ての人々が同じ道徳的原則に基づいた行動を取る必要があるという普遍的立場を主張している。これらの考え方は、現代においても重要な意味を持っている。一方で、カントの考え方には批判もある。しかし、その考え方が現代科学によって否定されるなかでも、カントの義務論は私たちに多くの示唆を与えてくれる。
