【序論】
本論文では、アメリカ合衆国における黒人奴隷制度が人権侵害であったことや、その解放に至る歴史的背景を検討する。アフリカ人が奴隷としてアメリカに移送され始めたのは、17世紀初頭であった。黒人奴隷は、労働力としてだけでなく、所有者の性的・人身御用や、商業的な利益のためにも使用された。彼らは家族と引き離され、人権を完全に奪われた状態で生きた。過酷な労働・生活条件であったため、多くの奴隷が疾病や餓死に至り、さらには所有者からの暴力や虐待もままあった。これらの行為は、人権の基本的な原則から逸脱したものであり、奴隷たちは人間としての自由や尊厳を一切無視された状態で生きた。 アメリカにおける黒人奴隷制度は、国家の立法や法律で法的に正当化されていた。しかし、奴隷たちは自己決定権を奪われていたため、自由を手にすることは困難であった。19世紀初頭には、奴隷制度に関する反乱や脱走などの活動が活発化し、アメリカ南部の州で奴隷制度廃止を求める運動も露呈した。アメリカ北部と南部の間で対立が高まり、南部州の脱退をきっかけとして南北戦争が勃発した。戦争中、北軍による奴隷解放宣言や、戦後の人種問題に関する憲法改正により、奴隷制度は正式に廃止された。しかしながら、奴隷解放後も、黒人たちは差別や人種的偏見に晒され、社会的地位や政治的権利を制限された。本論文では、黒人解放後のアメリカ社会における、黒人と白人の人種問題についても取り上げる。
【本論】
アメリカで奴隷制度が廃止された後も、黒人たちは差別や人種的偏見に直面した。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、南部でジム・クロウ法により人種差別が正当化され、公民権運動が起こった。 公民権運動は、黒人たちの社会的地位向上や人種差別の撤廃を求める運動である。黒人たちは、非暴力抵抗や市民的不服従により抗議活動を展開し、公民権法や選挙権法の制定につながった。しかし、運動が進むにつれて、暴力的な事件も起こり、黒人たちは暴力による差別からの解放を求めた。 公民権運動は、Martin Luther King Jr.などの指導者によって牽引され、1960年代にピークを迎えた。その後、人種差別の撤廃は進みつつあるものの、黒人たちは今なお社会的・経済的に不利な立場にあり、問題は根深いものとなっている。 アメリカでの黒人に対する差別問題は、今日でも続いている。人種差別の形態は時代とともに変化してきており、現在は差別的な警察の行為や企業の人種的な不平等な雇用などが問題となっている。今後もアメリカ社会における人種問題は重要なテーマであり、解決に向けた取り組みが必要である。
【結論】
本論文から明らかになったのは、アメリカ合衆国における黒人奴隷制度は、人権侵害の歴史であることが示された。彼らは人間としての自由や尊厳を一切奪われており、過酷な労働・生活条件にさらされていた。奴隷解放に至る歴史的経緯を通じて、人権侵害が法律で正当化されていたことが明らかになり、自己決定権が奪われていたことから自由を手にすることが困難であったことも指摘された。しかし、奴隷制度に反発する運動が活発化したことで、南北戦争が勃発し、戦争中に北軍による奴隷解放宣言や戦後の立法により、奴隷制度は正式に廃止された。本論文では、解放後の人種問題についても言及されており、黒人たちは解放後も社会的地位や政治的権利を制限されており、これが本質的な問題として残っていることを示している。アメリカの歴史から学ぶべきことは、人権を無視した社会制度を過去に遡って修復することが可能であることである。
