【序論】
本論文は、明代における時期区分について再考することを目的としたものである。従来の研究では、1368年の明朝成立から1644年の清朝成立までの約300年間を同一の時期として捉え、総合的に「中期」と呼ばれることが多かった。しかしながら、この時期区分が政治・社会・文化の転換点から見ると、明代には時期の変化があったことが指摘されている。本論文では、政治的な転換点として靖難の役（1402年）や万暦の事件（1582年）を取り上げ、社会的な転換点として世襲制度・知識人の役割・農民反乱を見ていく。また、文化的な転換点として科挙制度の変遷・宗教・文化芸術の動向を取り上げ、時期区分の問題を探る。本論文が、明代の時期区分の再考に向けた第一歩となることを期待している。
【本論】
本論文では、明代における時期区分について再考することを目的としている。前提として、これまでの研究によって、明代は1368年から1644年の間を「中期」として捉えられていたことが挙げられる。しかし、この時期区分が政治・社会・文化の転換点から見ると、明代には時期の変化があったことが指摘されている。 政治的な転換点としては、靖難の役や万暦の事件が取り上げられる。靖難の役は、永楽帝が即位するために実行されたクーデターであり、政権内部の権力闘争として位置付けられる。一方、万暦の事件は、皇帝と宦官との対立が原因であり、後に中央集権化の進展に影響を与えることになった。 社会的な転換点としては、世襲制度・知識人の役割・農民反乱が取り上げられる。明代においては、世襲制度が徐々に弱体化し、官僚の選抜が実際の政治において重要になってきた。同時に、知識人の役割も高まっており、文化的・社会的な影響力を持っていた。また、農民反乱も複数発生しており、地域の安定という観点からも重要な政治的課題となっていた。 文化的な転換点としては、科挙制度の変遷・宗教・文化芸術の動向が取り上げられる。科挙制度は、明代においては官僚になるための最も重要なルートであり、その変遷は政治権力の変化と密接に関係していた。また、明代においては、宗教的信仰の影響が大きく、多様な信仰があり、それが政治統治にも影響を与えていた。文化芸術においても、明代は多様な芸術や文化が発展し、政治的・社会的・宗教的な要因によって変化していった。 以上のように、明代には政治・社会・文化の転換点が存在している。本論文では、これらの要素を踏まえた上で、時期区分の再考を試みることになる。明代の時期区分における新たな知見を得ることができることを期待している。
【結論】
本論文では、従来の明代に関する研究の中で一般的に用いられてきた「中期」という時期区分が実は政治・社会・文化の転換点から見ると、多様な変化があったことを指摘する。政治的な転換点として靖難の役や万暦の事件を挙げ、社会的な転換点として世襲制度や知識人の役割、農民反乱を見ていく。また、文化的な転換点として科挙制度の変遷、宗教、文化芸術の動向を取り上げ、時期区分の問題を探る。このように、明代の時期区分に対する再考を目的とした本論文が、明代史研究において新たな議論を切り拓くことを期待している。
