【序論】
人が外界からの刺激を捉えることは、日常生活において不可欠なことである。この刺激を捉えるプロセスは、我々の神経系が可能にしている。これまで、感覚器官からの情報伝達から、その後の神経回路の分析まで、外界からの刺激を処理する神経系に関して多大な研究が行われてきた。これらの研究の成果により、外界からの刺激を捉える神経回路が一部解明された。そういった中でも、視覚や聴覚などについては比較的解明されている一方、嗅覚や触覚については多くの部分が未解明となっている。今回の論文では、嗅覚や触覚などの外受容感覚に着目し、その神経科学的解明に向けて、現在までの研究成果を振り返り、新しい研究への展望を提供することを目的とする。外受容感覚を解明することにより、より正確な外界の情報処理が行われ、脳の高次機能についても新たな知見が得られることが期待される。
【本論】
嗅覚や触覚などの外受容感覚についての研究は、視覚や聴覚に比べると遅れをとっている。しかし、最近は新たな技術の発展により、神経回路の解明が急速に進み、以前に比べて多くの成果が得られている。例えば、嗅覚においては、嗅球における神経回路の解明により、異なる種類の臭いに対する神経回路の動作が明らかとなってきた。また、触覚においては、触覚受容体の解明が進み、それぞれの受容体がどのような刺激に反応するかが明らかとなってきた。これらの知見を基に、嗅覚や触覚の情報処理において、どのような神経回路が活動しているかについての解明が期待される。 さらに、最近では多くの脳機能画像技術が開発された。その中で、fMRIやMEEGなどの技術により、脳の特定の領域が、嗅覚や触覚などの特定の外受容感覚に対してどのように反応するかについて解明されるようになった。これによって、外受容感覚に対する脳の反応が可視化されることで、今後の研究の進展が期待される。 現在の外受容感覚を解明する研究には、外部からの刺激を受け付ける神経回路のみならず、中枢神経系や運動神経系も含まれる。そのため、これらの神経回路がどのように相互作用しているかについての解明も必要となる。また、疾患における外受容感覚の障害についての研究も重要である。例えば、嗅覚の障害はアルツハイマー病を含む多くの疾患の特徴であるため、その治療法の開発につながる可能性がある。 これまで解明が遅れていた嗅覚や触覚に関する研究においても、新たな技術の導入や脳機能画像技術の発展により、多くの成果が得られつつある。今後の研究により、外受容感覚に対する脳の反応がより明らかになることで、より正確な情報処理が行われるだけでなく、脳の高次機能についての新たな知見が得られることが期待される。
【結論】
本論文では、嗅覚や触覚などの外受容感覚について、その神経科学的解明に向けて現在までの研究成果を振り返り、新しい研究への展望を提供することを目的とした。これまでの研究により、視覚や聴覚など多くは解明されているが、嗅覚や触覚については多くが未解明であることが明らかになった。外受容感覚を解明することにより、より正確な外界の情報処理が行われ、脳の高次機能についても新たな知見が得られることが期待される。今後の研究の展開により、外受容感覚における神経回路や機能の更なる解明が期待される。