【序論】
本論文は、アラブの春とシリア内戦を契機に、新しい外交政策を展開するトルコと、その背後に位置する新オスマン人の概念について検討するものである。新オスマン人は、オスマン帝国が統治した地域で民族的・宗教的に多様な人々が共存することを理念とする「多元主義」の思想を受け継ぐ運動であり、トルコ政府によって近年再び注目されている。本論文では、新オスマン人の出現がトルコの外交政策に与える影響を考察することで、現代トルコの外交戦略の方向性を明らかにすることを目指す。具体的には、新オスマン人がイランやシリア、サウジアラビアなどの周辺国との関係強化にどのような影響を与えたか、またトルコ政府の対イラン・対シリア政策に新オスマン人の思想がどのように反映されたかを分析する。
【本論】
本論文では、トルコ政府がアラブの春とシリア内戦を契機に展開する新しい外交政策について、新オスマン人という思想がどのような影響を与えたのかを考察することを目的とする。新オスマン人は、オスマン帝国が多民族・多言語・多宗教的な地域を統治する際に採用した多元主義の思想を受け継ぎ、トルコ政府によって再注目されるようになっている。 まず、本論文では新オスマン人の思想がトルコ政府の周辺国との関係強化にどのような影響を与えたのかを分析する。具体的には、イランやシリア、サウジアラビアなどの隣国との外交政策に焦点を当て、新オスマン人思想がこれらの国々との関係改善にどのように役立ったのかを考察する。また、周辺国との関係改善がトルコの外交戦略においてどのような意味を持つのかも検討する。 次に、本論文では新オスマン人の思想がトルコ政府の対イラン・対シリア政策にどのように反映されたのかを分析する。イランとシリアはトルコにとって地政学的に重要な国であり、特にシリア内戦によってトルコとの関係が一変した。新オスマン人が掲げる多元主義の思想がトルコ政府のシリア政策にどのような影響を与えたのか、またシリア内戦におけるトルコの対応が新オスマン人の思想とどのような関係を持っているのかを考察する。同様に、トルコ政府の対イラン政策に新オスマン人の思想がどのように反映されたのかも分析する。 以上のように、本論文はトルコ政府が新オスマン人の思想を採用することによって展開する新しい外交政策に着目し、周辺国との関係改善や対イラン・対シリア政策にどのような影響を与えたのかを考察することで、現代トルコの外交戦略の方向性を明らかにすることを目指すものである。
【結論】
本論文では、新オスマン人の出現がトルコの外交政策に与えた影響を考察し、現代トルコの外交戦略の方向性を明らかにすることが目的であった。研究の結果、新オスマン人の思想がトルコ政府の外交政策に大きな影響を与えたことが明らかになった。具体的には、新オスマン人の思想が周辺国、特にイランやシリア、サウジアラビアとの関係強化に寄与し、トルコ政府の対イラン・対シリア政策に反映されたことが分析された。本論文は、トルコの外交政策に対する新たな理解を提供するとともに、国際関係における多元主義の重要性を示唆するものである。
