【序論】
本論文では、エドマンド・スペンサーの代表作『妖精の女王』における神話的要素に注目し、その解析を行う。『妖精の女王』は、16世紀に書かれたイギリス文学史上でも重要な作品の一つであり、フェアリーと呼ばれる妖精たちの世界を描いた叙事詩である。本論文では、この作品に登場する神話的要素の中でも、アーサー王物語やギリシャ神話、キリスト教などがどのように取り入れられ、どのような影響を与えているかを分析する。また、これらの要素がどのように物語の進行に関与し、読者にどのような印象を与えるかについても論じる。さらに、スペンサーが当時の文化的背景や宗教観念をどのように反映し、その意図がどのように作品に表れているかも考察する。本論文が、『妖精の女王』がどのように神話的要素を用いた作品であるのかを明らかにし、スペンサーの作品に対する新たな理解を提供することを目的とする。
【本論】
『妖精の女王』において、スペンサーは様々な神話的要素を巧みに取り入れている。その一例として、アーサー王物語が挙げられる。この物語は、イギリスの歴史や文学において極めて重要な役割を持つものであり、『妖精の女王』においても重要な位置を占めている。スペンサーは、アーサー王物語のエピソードや登場人物を自身の作品に取り入れ、独自の解釈を加えている。例えば、『妖精の女王』の主人公レッドクロス騎士がアーサー王の館に逗留するエピソードでは、スペンサーはアーサー王を神聖な存在として描き、レッドクロス騎士の冒険が神聖な使命であることを強調している。また、レッドクロス騎士が魔女ドゥエッサと戦うエピソードでは、アーサー王物語に登場する魔女モルゴースをモデルにしているとされる。 さらに、ギリシャ神話も『妖精の女王』において重要な役割を担っている。例えば、女神ダイアナが登場するエピソードでは、スペンサーが自身のオリジナルの解釈を加えることで、ギリシャ神話の要素を巧みに取り入れている。また、「アキレウスの盾」というエピソードでは、ギリシャ神話におけるアキレウスの伝説をもとに、スペンサーが独自の解釈を加えている。 一方で、『妖精の女王』にはキリスト教的な要素も含まれている。特に、騎士道精神や聖杯伝説といったキリスト教的な要素が強く反映されている。スペンサーは、レッドクロス騎士の冒険をキリスト教的な使命として描写することで、読者に騎士道精神や聖杯伝説についての理解を深めさせると同時に、キリスト教的な価値観を提示している。 以上のように、『妖精の女王』には様々な神話的要素が取り入れられており、それらが物語の進行や登場人物の描写に影響を与えている。また、これらの要素がスペンサーが当時の文化的背景や宗教観念を反映させたものであることも見えてくる。このように、『妖精の女王』における神話的要素の解析から、スペンサーの作品全体に対する新たな理解が得られると考えられる。
【結論】
本論文では、エドマンド・スペンサーの『妖精の女王』において、アーサー王物語やギリシャ神話、キリスト教などの神話的要素がどのように取り入れられ、どのような影響を与えたのかを詳細に分析している。また、これらの要素が物語の進行にどのように関与し、読者にどのような印象を与えるかを探究する。さらに、スペンサーが当時の文化的背景や宗教観念をどのように反映しているかを考察し、その意図が作品にどのように表れているかを見ていく。本論文を通じて、『妖精の女王』がどのように神話的要素を用いた作品であるかを明らかにし、スペンサーの作品に対する新たな理解を提供することを目的としている。
