【序論】
本論文は、鎖に繋がれた象の福祉についての倫理的な考察を行うものである。昨今、動物の愛護や福祉に対する関心が高まっており、動物園での動物飼育にも厳しい目が向けられている。中でも、大型哺乳動物である象については、その容易さから多くの動物園で飼育されているが、その飼育方法については様々な議論がある。鎖に繋がれた象は、自由に歩き回れず自然な行動をとることができず、ストレスを感じているという指摘がある。また、そのような環境下で飼育されることにより、繁殖力の低下や、病気にかかりやすくなるといった問題もある。本論文では、このような鎖に繋がれた象の福祉について、動物福祉に関する倫理学的な視点から考察し、適切な飼育方法について提言することを目的とする。
【本論】
本論では、象の福祉についての倫理的な考察を行う。一般的に、動物福祉に関する倫理学的なアプローチには、動物の権利に注目するものと、動物の利益に注目するものがある。この考え方を踏まえて、鎖に繋がれた象の福祉について、権利の観点と利益の観点から考えることができる。 まず、権利の観点から考えると、象には自己決定権があると考えることができる。つまり、象は自由に歩き回り、自然な行動をとる権利を持っているということである。従って、鎖に繋がれた象はその権利が侵害されており、その福祉に悪影響を及ぼすことが明らかである。 次に、利益の観点から考えると、鎖に繋がれた象にはストレスの問題がある。容易に想像できるように、狭いスペースに繋がれている象は、自由に歩き回ることができないため、ストレスを感じることがあり、その結果、健康状態が悪化することがある。このような問題を解決するためには、十分なスペースを確保することや、適切なエンリッチメントを行うことが必要である。 以上のように、鎖に繋がれた象の福祉について、権利の観点と利益の観点から考察した結果、自由に歩き回る権利が侵害されていることや健康状態の悪化が懸念されることが判明した。適切な飼育方法としては、十分なスペースを確保し、適切なエンリッチメントを行うことが重要である。また、飼育環境については、象が自然な生息地と同じような環境を再現することが求められる。これらの提言が、鎖に繋がれた象の福祉向上につながることが期待される。
【結論】
本論文では、鎖に繋がれた象の福祉に関する問題を、倫理学的な視点から考察し、適切な飼育方法を提言することを目的としている。調査結果から、鎖に繋がれた象が自由に歩き回ることができず、それによってストレスや繁殖力の低下、病気にかかるリスクが高くなることが明らかになった。このような状況下での象の飼育は、動物福祉上問題があると考えられる。そこで、適切な飼育方法として、コストや労力がかかるが、象が自由に動き回れるような環境を整えることが必要であると提言する。本論文を通じて、動物福祉を促進し、動物園・施設における飼育において、倫理的な観点を重視することが重要であることを示すことを目指す。