【序論】
本論文は、ベーコンと人文主義の哲学的関係性について探究するものである。フランシス・ベーコンは、17世紀に活躍したイギリスの哲学者・政治家であり、その功績は数多い。彼の業績の中でも特に重要なものは、科学的方法論の確立である。一方で、人文主義はルネサンス期のイタリアで起こり、人間中心思想、芸術や文学の奨励などを特徴としていた。本論文では、二つの異なる哲学的立場であるベーコンの経験主義哲学と人文主義の考え方との関係性を探求し、それらを比較することを目的とする。人文主義は芸術や文学を重視する一方で、ベーコンはより科学的な観点から世界を見つめていた。本論では、この二つの異なる哲学的立場がどのように結びついているのか、また互いに対照しあいながら発展してきたかについて掘り下げていく。本研究が、ベーコンと人文主義の哲学的関係性についての新たな理解をもたらすことを期待する。
【本論】
ベーコンの経験主義哲学は、彼が「ノヴム・オルガヌム (新オルガヌム)」で提唱した、実験や観察に基づく科学的方法論を中心としている。この方法論により、真理を発見し、知識を獲得し、人類の繁栄を促進することが可能だと考えられた。一方、人文主義の考え方は、その本質的に人間中心の思想に基づいたものであり、芸術や文学を中心に据え、人間の啓発に寄与することを目的としていた。 しかし、ベーコンの経験主義哲学と人文主義の考え方には重要な共通点が存在している。両者は、自己の方法論に対する疑問を持っていた。人文主義者たちは、従来の学問を批判し、人間の感情や経験により関心を持つことを強調した。同様に、ベーコンは、様々な誤謬の原因となる専門知識や前提に基づいた推論を批判し、観察や実験による客観的な調査を提唱した。 加えて、ベーコンと人文主義の考え方は相互に影響を与え合っており、両方において芸術や文学の重要性が認められていた。ベーコン自身は、芸術や文学に深い興味を持ち、自身の作品中でもしばしば引用している。また、人文主義が強調した修辞学の研究にも重きをおいており、自身の作品において修辞的な表現を多用している。 以上のように、ベーコンと人文主義の哲学的立場においては相互に影響を与え合った。ベーコンは、科学的方法論を中心に世界を捉える一方で、人文主義者たちは芸術や文学に基づいた知識の獲得を重視していた。両者の考え方が異なる点があったとしても、その共通点は、真理や知識の発見に対して、従来の方法に対する疑問と自己の周辺に関心を持つことであった。本研究により、ベーコンと人文主義の哲学的関係性についての新たな理解が与えられることを期待する。
【結論】
本研究から得られた結論は、ベーコンの経験主義哲学と人文主義は異なる立場であるが、それらが相互に影響し合い、発展してきたことが確認できた。特に、ベーコンの科学的方法論が、人文主義の文学や芸術に対する理解を深め、それらの表現の正確性や自然性に対する重視につながったことが示された。また、ベーコン自身が人間性や幸福についての思考を持ち、それらが人文主義的な観点と共通していたことが示唆された。本研究により、ベーコンと人文主義の関係性がより明らかになり、哲学史の一端を照らす新たな知見が得られたと言える。
