【序論】
本論文は、現代日本の財政政策の変遷を検討するため、井上財政を取り上げる。井上財政は、日本が大正時代に採った財政政策であり、第一次世界大戦の勃発と同時に始まった。この政策は、それ以前の国家財政の方針とは異なり、中央集権的な財政に移行した。また、井上財政は、国家財政を立て直すための財政再建を目的とし、その達成にあたっては、民間の資金を国庫に集める「国債」が中心的な手段として用いられた。 本論文では、井上財政についての歴史的背景とその実施過程に着目し、井上財政が日本財政政策の転換点として果たした役割を詳しく分析する。さらに、井上財政によって、日本の財政政策は、国家財政の建て直しを目的とした中央集権的な政策から、戦後の重商主義的な政策へと変化していったことを論じる。そして、この変化が戦後の経済発展にどのように影響を与えたのかについても考察する。本論文の目的は、井上財政とそれに続く財政政策の変遷を通じて、日本の財政政策の展開についての新たな知見を提供することである。
【本論】
井上財政は、日本が第一次世界大戦において参戦した際に、国家財政再建を目的に導入された政策である。当時、日本は海外からの輸入品に頼っていたため、戦争の影響によって商品価格が高騰し、国内の消費力が低下していた。こうした状況の中で、井上財政は国内の生産力を向上させ、消費力を喚起させることを目的として導入された。 井上財政は、国家財政の中央集権化を進め、民間からの資金調達に力を入れた。具体的には、国債の発行を中心とした手法が用いられた。これによって、国内の資金が集中して国家財政の建て直しに充てられるようになった。この財政政策は、急激な経済成長を促すものではなかったが、国家財政の再建に成功し、日本の財政政策を立て直す礎となった。 さらに、井上財政は戦後に日本が取った重商主義的な財政政策への変化をもたらした一因でもあった。重商主義的な財政政策は、貿易黒字を目指して輸出を増やし、海外からの技術移転を促進する政策である。この政策によって日本の経済成長が加速され、日本は発展途上国から先進国へと躍進することになった。 ただし、重商主義的な財政政策は、貿易不均衡を招くなどの問題点も指摘されるようになった。これに対して、世界の市場構造に合わせた自由貿易的な財政政策への転換が求められるようになり、現代の日本の財政政策においても重要な位置を占めるようになっている。 以上のように、井上財政は、日本の財政政策にとって重要な転換点となった政策であり、その後の戦後の経済発展にも影響を与えた。それにもかかわらず、官僚主導の中央集権的な財政政策が行われたことも事実であり、現代の日本においても、適切なバランスを考えながら財政政策を進めていく必要がある。
【結論】
本論文の結論として、井上財政は日本財政政策の転換点であり、国家財政の建て直しを目的とした中央集権的な政策から、戦後の重商主義的な政策へと移行する契機となったことが明らかになった。また、この変化は戦後の経済発展にも大きな影響を与えたことが分かった。本論文が提供する新たな知見は、今後の日本の経済政策の展開にとっても役立つことが期待される。