なぜ人は自ら死を選ぶのか

なぜ人は自ら死を選ぶのか

 日本人は自殺者が多い。これは、世界全体や先進国の中でもトップクラスの割合である。なぜ自ら死を選ぶのか。メンタルが弱いなどと一言では語ることのできない理由や心理があるはずである。自殺しようとした人の証言や、自殺に関するデータをもとに今回の疑問を説き明かしていく。

 自殺を図る方の考え方として、自殺という行為は一つの自己救出手段と考えている傾向にある。何らかの耐え難い状況から脱したいという思いから、自殺する危険性は高くなる。

そして、自殺者の多くは主な統合失調症をなっている場合が多い。自分の周りの環境や、感情を正常に認識できない状態である。また、自殺願望をいだきやすいかどうかは、遺伝が約43%を締めていて、残りの57%は環境要因であると言われている。遺伝的要因を抱えている人は、辛いことが立て続けに起こると普通の人より自殺しやすい。では、多くの人における自殺するトリガーはなにか。多くの人(おおよそ9割程度)は、社会不安からくる神経疾患と言われる。もちろん神経疾患、鬱病にかかっている全ての人が自殺に走るわけではない。鬱状態の中で自殺してしまうのは、全体の中の5%程度であると言われている。しかし、鬱病神経疾患は大きなトリガーである。実際、鬱病でない人の自殺率は、自殺者の0.5%くらいである。さて、なぜこれだけ恵まれている日本は自殺者が多く、発展途上国の子供たちは厳しい環境でも懸命に生きているのかという疑問が再びやってくる。これは、自殺するリスクは理想的な生活状態にあるほど高くなるというデータから理解できる。理想的な暮らしを送っている人たちの幸せの基準が高すぎることによって、物事が少し厄介になっただけですぐ不幸と感じてしまうという状態になる。江戸時代では、白米いっぱいが非常に高級であったのに、今は白米だけでは貧しい、不幸だと感じてしまう。時代が進み、私たちの生活が豊かになったことで失敗に対する耐性や、幸せの基準も大きく変わったということだろう。

 今回は自殺の心理状態について考えてみたが、心理学に合わせて、社会学についても缶消している内容であった。社会が進めば、幸せもそれに比例するわけではない。それぞれが日々、今日目が覚めてくれたこと、家族がいること、食事を取れること、暖かいお湯が使えることという当たり前のことに感謝することがなによりその人を自殺から遠ざけるのかもしれない。

 参考文献:「ヒトはなぜ自殺するのか 死に向かう心の科学」ジャーシー・べリング:著

      鈴木光太郎:訳 化学同人 2021年1月31日

タイトルとURLをコピーしました