政治的意思決定、特にグローバル化した政治環境においては、複数の道徳的配慮が重なり合い、絡み合うことから、必ずある程度の複雑さが伴う。外交政策であれ、国内経済政策であれ、意思決定に至る前に、これらの道徳的、倫理的配慮を検討することが不可欠である。本稿では、政治的行動の道徳的曖昧さについて論じ、現在のグローバル化した世界において政治的決定を下す際に考慮しなければならない倫理的考察を探っていくことにする。
政治レベルでの意思決定に伴う倫理的ジレンマは、政治指導者が下す決定が、国内外を問わず、様々な形で大勢の人々に影響を与える力を持っていることに起因している。その意味で、政治的な意思決定には多くの様々な考慮事項が必要であり、その中には潜在的に相反するものもある。
例えば、ある政治家が行った特定の外交政策の決定は、経済的にプラスの意味を持つと同時に、人権的にはマイナスの意味を持つかもしれない。このため、政治的意思決定者は、経済発展と人権保護という相反する可能性のある2つの目標のどちらかを選択しなければならないという困難な課題を抱えている。
さらに、こうした難しい意思決定のプロセスは、政治的な決定がしばしば将来を視野に入れて行われるという事実によって、さらに複雑になっている。つまり、政治的意思決定者は、意思決定を行う際に、現在行われている意思決定の潜在的な結果だけでなく、その意思決定が実施された後の将来の潜在的な結果も考慮する必要があるのだ。
このような政治的意思決定の複雑さを考えると、何が倫理的な政治的意思決定となるのか、一律に答えられるものではない。この道徳的な曖昧さによって、様々な政治的決断がなされ、その中には道徳的に責任があるとみなされるものもあれば、非常に議論の余地があるとみなされるものもあるのだ。現在のグローバル化した世界における政治的意思決定においてしばしば見られるのは、このような道徳的な曖昧さなのである。
政治的行動の道徳的曖昧さは明らかであり、この曖昧さは、現在のグローバル化した世界においていかなる政治的意思決定を行う際にも考慮されなければならない。政治的意思決定の倫理的意味を考慮しなければならないし、何か決定を下す前に、複数の考慮事項を天秤にかけなければならないことに、十分な注意を払わなければならない。この道徳的な曖昧さと、そこから生じる倫理的な考察を理解することによってのみ、政治的意思決定者は可能な限り責任ある決定を下すことができるのである。
