「プラトンの『国家』に見る理想国家像」
古代ギリシャの哲学者プラトンは、その著書『国家』において、自身が理想とする国家像を描き出しています。本稿では、プラトンの『国家』に見る理想国家像を検討し、その思想の特徴や現代社会における意義について考察していきます。
プラトンは、『国家』の中で、理性・感性・欲望といった人間の三つの要素がバランスよく調和することが理想的な状態であると主張しています。そのためには、理性の支配下に感性や欲望がおかれる必要があると考えたプラトンは、哲人王という理性的な人間が統治する国家が理想的であるとしています。
具体的には、プラトンは哲人王による統治のもとで、階級制度を設置し、各階級がそれぞれの役割を果たすことで国家を構成すると考えます。最下層の階級は生産者であり、次の階級は軍人であり、最上層の階級が哲人王であるとされます。哲人王は、理性的・知識的能力が最も高い人間が選出され、哲学的な教育を施された上で統治するということになります。
これらの考え方から、プラトンは自由主義的な国家像とは対立する概念を提案しています。プラトンにおける理想国家では、人間が自己の欲望に支配されることを排除し、個人が国家のために奉仕することが求められます。また、階級制度や哲人王による統治といった点から、プラトンの理想国家は一種の封建制国家にも似た概念であると捉えられます。
一方で、プラトンの理想国家像には、現代社会においても有効性が認められる側面があります。例えば、教育の重要性を強調し、哲学的な学習内容を提供することで、現代社会の人々がより知的水準の高い人間に育つことが期待されます。また、側面から階級制度を導入することにより、技術といった分野での専門家が育ちやすくなり、高度な生産能力の向上も期待されます。
以上のように、プラトンの『国家』には、哲人王による統治や階級制度など、一見すると現代社会とは相容れない概念が多数登場します。しかし、教育の重要性や専門家の育成など、現代社会でも有効な哲学的考え方が多数含まれていることも事実であるため、『国家』は我々現代人にとっても読む価値がある哲学書の一つといえるでしょう。