「自然法思想の父、トマス・アクィナスに学ぶ」
トマス・アクィナスは、13世紀初頭に生まれ、西欧の中世哲学・神学の最大の思想家の一人である。彼が多くの著作を残し、西洋哲学史上重要な位置を占めるのは、「神学大全」、「哲学大全」等があるからである。以上のことからも、アクィナスは類い稀なる学問者であることが分かる。本レポートでは、トマス・アクィナスが哲学にもたらした貢献について述べるとともに、その思想について分析し、現代におけるアクィナスの思想の意義を考察する。
まず、アクィナスが哲学に与えた影響について考えてみる。アクィナスが用いた「自然法思想」は、キリスト教の重要な価値観を含みながらも、その結論に多くの人が同意できる普遍的なものとして発展したものである。アクィナスの自然法思想は、自然というものそのものを考えることから始まる。そして、自然に備わっている秩序や目的、そしてそれらが成立している原因(神)を探求することによって、人間の法の源泉を焼き付けたのである。また、アクィナスは自然主義ではなく、神学的な見方に立つことによっていくつかの困難を解決している。例えば、アリストテレスは、人間の目的を考えるにあたり、「幸福」という概念を持ち出した。しかし、この「幸福」という概念について、アリストテレスが述べたものは「自己完遂」に基づいた考えだった。つまり、自分自身の欲求が満たされることによって人間は幸福になる、というものである。これに対して、アクィナスは神学的視点から人間の幸福について考えた。すなわち、「神と一体化することによる幸福」である。こうした視点は、キリスト教徒にとっても違和感のない価値観であった。
次に、アクィナスの思想について分析してみよう。彼が最も重要視したのは、「存在」であり、「知覚」ということができる。アクィナスは、「真理」とは「存在するものの関係性」であると考えた。すなわち、すべてのものは、それ自身の内部に存在する価値観から見て、自分自身を本質化し、存在していると述べた。そして、それぞれのものが本質を持っていることから、それらが互いに作用しあうことができるのである。こうした考え方の背景には、アリストテレスの「付加された形」がある。すなわち、物質が表面上に持つ形容詞的な性質と、その本質的な性質が完全に一致することがあるのである。こうした考え方は、神が存在することによって成立するのである。
最後に、アクィナスの思想が現代においてどのような意義を持つのか考察してみよう。アクィナスの思想は、神学的見解を持ちながらも普遍的な価値観を持つという点が大きな特徴である。現代においても、アクィナスの哲学的・神学的なアプローチが、複雑になりつつある社会の中での個人的なアプローチや人生観を持つ人々にとって有用なものかもしれない。また、人間の目的や幸福についての考えは、より広範囲にわたる思考を促すかもしれない。アクィナスは、近代哲学に及ぼした影響が大きい思想家であることからも、その思想が現代においても有用かつ価値あるものであると言える。
本レポートでは、トマス・アクィナスの自然法思想についての貢献と、本質的な思想について分析し、そして現代における彼の思想の価値について考察してきた。アクィナスは、哲学だけでなく科学や神学にも多大な貢献をし、西欧哲学史上の重要人物となっている。彼の思想は、自然則からはじまり、人間に対するキリスト教的な価値観から、真理の見方に至るまで非常に緻密である。今後もアクィナスの思想を研究し、彼の思想にならい哲学的・価値観的な探求を続けることが重要であるといえる。