「移民政策と人権の衝突――欧州における難民問題の深刻化」
概要:
2015年のシリア難民危機以降、欧州では難民や移民の数が急増し、その受け入れに伴う社会問題が顕在化しています。欧州に初めて入国する難民や移民の多くは、彼らの故国での戦争・迫害などの経験により精神的・心理的な問題を抱え、かつ大半が雇用・保険・住居などの社会資源にアクセスできない状況に置かれています。このような中、欧州諸国は受け入れ政策の変更や厳格化、難民・移民の処遇の改善策の導入に取り組む一方、新たな人権問題の発生に悩まされています。本稿では、欧州における移民政策と人権の衝突がどのような問題を引き起こしているかを探り、解決策を提示していきます。
本文:
欧州では、難民や移民に対する受け入れ政策が欧州連合(EU)各国で異なることから、複数の問題が浮上しています。イタリアやスペイン、ギリシャなどの地中海沿岸地域などは、多くの難民・移民がイタリア人・スペイン人などの方々に会食・宿泊を求めてやってくることにより不安定化しています。そして、彼らを支援する市民団体と国家機関の間に少なからず摩擦が生じ、また都市部などでは彼らが暮らすことにより治安が悪化するという問題があります。また、ドイツやフランスなどの西欧諸国は、適切な難民・移民の受け入れ先・処遇方法を確保できないことから、社会に保護されない「無国籍者」として生きる人々がますます増加しています。
こうした状況を踏まえ、欧州諸国は新たな移民政策の策定に取り組んでいます。一例として、ドイツでは2015年に実施された移民・難民の大量受け入れにより、2016年以降から厳格な受け入れ・処遇政策を実施するよう方針転換を図りました。その他、難民申請手続きを簡易化する政策の導入や、難民・移民への社会資源支援の強化なども行われています。
しかし、このような政策によっても解決するのは困難であることを考慮する必要があります。移民政策は必ずしも人権を優先的に保護できるわけではなく、実際に欧州においては次々と人権侵害事件が報告されています。例えば、不法滞在者を対象とした強制送還にかかる強行手続き、劣悪な収容所での人権侵害などがその代表例です。こうした人権侵害に反対する市民団体やNGOの数も急増しています。
解決策として、欧州諸国が最初に手を差し伸べるべきは、彼らを受け入れる社会での就職・教育・医療・住宅などの権利保護を確実に行うことです。政府にとっては難しい課題かもしれませんが、一人ひとりの人権が守られることの重要さにも目を向けていく必要があると思います。また、移民政策が人道危機を防ぐためのものという意識を持ち、難民・移民受け入れや処遇を公平かつ透明性のある手順で行うことが求められます。
まとめ:
欧州においては、欧州連合各国の難民・移民受け入れ政策が分かれることから、新たな人権侵害や治安不安定を招く問題が顕在化しています。政府は受け入れ政策を改める一方で、先にも述べたように受け入れ社会における人権の保護にも取り組むべきです。問題再発防止のために、欧州内デモクラシーの観点から移民・難民処遇改善の取り組みを求めるのを放棄してはなりません。