タイトル:心の中の幽霊船
序論:
心理学において、思考実験は実験室での実際の実験ができない事象を扱う際に、有用な手法とされています。思考実験では、問題提起と仮説検討が主に行われ、その過程で新しいアイデアや結論が導き出されます。本レポートでは、有名な思考実験の一つである「心の中の幽霊船」について取り上げ、その解釈や論争点について考察していきます。
本論:
「心の中の幽霊船」とは、イギリスの哲学者デレク・パートリッジが提唱した思考実験であり、スコープ海峡を航海中の船員たちが、次々と部品が切れていき、修繕しながらやっと帰港できた後、全ての部品を交換して同じ船で再び航海する場合、それは同じ船なのか?という問いに対する解答として用いられます。
この思考実験にはいくつかの解釈がありますが、代表的なものには「物質的継続説」と「形式的継続説」が挙げられます。前者は、船が同じ物質的なものであれば同じ船であるという考え方です。一方、後者は、別の部品でありながら同じ形式を継続しているのであれば、同じ船と考えるとする考え方です。
この問題にはいくつかの論争点が存在します。まず、物質的継続説については、部品が切れていく過程でどの時点で別の船になるのか、という点について議論があります。また、形式的継続説においては、形式が同じであるという点について、どの程度まで同じであるという議論もあります。このような論争には結論が得られない場合があるため、両説を併せた立場を持つ学者もいます。
また、この思考実験は、身の回りの物の同一性にとどまらず、自己同一性についても考えることができます。人は日々変化し成長していきますが、その中で自己はどのような存在なのかという問いに対する考察にもなります。同じ人格でありながら、過去と現在が違えば同一性を疑うことができます。このように、思考実験は広い範囲での問題提起に利用されています。
結論:
「心の中の幽霊船」という思考実験は、身の回りの物の同一性を問い、物質的継続説と形式的継続説という対立する立場が存在します。そのため、結論が得られない場合もあり、両立する立場を取る学者もいます。また、この思考実験により、自己同一性についての考察もできることが分かりました。思考実験は、実験室で再現困難な事象についても考察を進めることができる有用な手法と言えます。