タイトル：考えることは自由であるか？

序論：

思考実験によって私たちはより深く自分自身や社会について考えを巡らすことができます。その中でも、今回私が選んだのはジョン・ロールズが提唱した「ヴェール・オブ・イグノランス」という思考実験です。この思考実験は、人々が社会のルールや倫理についてどのような価値観を持つかを問いかけます。この考え方が、私たちにとってどのような示唆を与えてくれるのか、論述していきたいと思います。

本論：

「ヴェール・オブ・イグノランス」とは、私たちが自己関心を持たない状態で社会のルールや制約を決めることをイメージした思考実験です。つまり、私たちが何らかの社会的立場にある前提条件をすべて無視した状態で、社会のルールや倫理について考えるというものです。

例えば、自分が誰かわからない、性別、人種、階級、宗教などの情報を持たない「情報空白状態」を想像することです。この状態で、社会のルールや倫理を決める場合、私たちはどのようなルールを決めるでしょうか？ひとつの具体例として、医療制度について考えてみましょう。私たちは自分が健康であると仮定し、もしなんらかの病気に罹患する可能性があった場合に想定される費用を平均化し、社会的に負担を分担するような社会保障システムを設定することになるでしょう。

ですが、この思考実験で問われているのは、健康である確率や負担分担の仕方ではありません。社会のルールや倫理についての基本的な考え方が問われているという点です。私たちは、情報の空白状態でそのような健康保険制度を設定することを決める一方で、現実には、永続的に健康でいることの不確実性や医療を必要とする年齢層の違いなどから、個人の負担額が異なることや貧困層や高齢者への支援が不十分であるといった問題が発生しています。

結論：

私たちは日常生活の中で、社会のルールや倫理について議論し決定することがありますが、それらが数多くの前提条件に基づいていることが考えられます。そのため、ヴェール・オブ・イグノランスの思考実験を通じて社会のルールや倫理に疑問を持ったとしても、実際に行動する際には様々な情報や条件を考慮する必要があると言えます。

しかし、この思考実験で問われている「正義」という根本的な問題を考えることはとても大切です。私たちは、自己関心の強い人間であるため、自分にとって都合の良いルールを作りたいと願うことがあるかもしれません。しかし、より公正な社会を作るためには、自己関心を超えた視点で考えることが必要だと言えます。私たちは、少しでも自己関心を持たない、オープンマインドな考え方を持つことが求められているのかもしれません。