財政政策の役割と課題:日本の現状
はじめに
日本の財政政策は、昨今、中長期的な持続可能性をめぐる課題を抱えている。その理由の一つは、高度原子力発電所事故による復興支援等特別会計の廃止(2021年度予算案)に伴い、財政収支の悪化に対する懸念である。特に、国債発行残高の大幅な増加と、人口構造の変化による社会保障費の負担増加は、将来にわたる財政安定の脅威となっている。
本稿では、財政政策の基本構造から日本における課題を考察し、将来にわたる財政安定のために実行すべき政策を論じたい。
財政政策の基本構造
財政政策は、政府支出と課税収入が合わされた財政収支のバランスを調整し、経済を安定化させるための政策である。通常、景気後退期には、政府支出を増やし、税収減少分を補填して景気刺激を図ることが行われる。しかし、景気回復期においては、国債発行残高の抑制などを行い、財政の健全化を図る施策が必要である。
もう一つ重要なポイントは、財政政策における政策ミックスである。通常、「3本の矢」と呼ばれる金融政策・財政政策・成長戦略が、日本の経済政策の基本的な柱とされている。財政政策は、金融政策と成長戦略とともに、企業投資の増加や雇用創出に対する後押しを行うための大きな役割を担う。
日本における課題
日本においては、景気の停滞と人口減少による社会保障費の負担増加など、財政政策に関連する課題がいくつかある。
まず、人口減少と高齢化が、社会保障費の財源不足を招き、政府債務の増加を引き起こしている。日本の変動原因分解財政指数を見てみると、社会保障費の増加が財政赤字に与える影響が大きいことが分かる。一般会計の歳出のうち、社会保障関連の割合は2019年度には2割を超えており、公的年金関連費や国民健康保険負担金などの社会保障費が、歳出削減に難航する大きな課題となっている。
次に、国債発行残高の大幅な増加も、重要な財政政策に関連する問題である。 日本政府は、新型コロナウイルス感染症対策のため、2021年度予算案において、100兆円を超える国債発行を予定しており、国債残高は、1000兆円を突破する可能性がある。さらに、国債の金利が上昇した場合、国債財政運用における金融リスクが増加する恐れがある。
政府による抜本的な歳出削減は、国民生活に重大な影響を与えることが予測されるため、公的規制改革や国債発行残高抑制策の実施など、効果的な経済政策による財政健全化が求められている。
将来にわたる財政安定のために必要な政策
将来にわたる財政安定のためには、以下の点が必要である。
1. 人口減少による社会保障財源の確保
日本の人口減少による社会保障費の財源不足を解決するために、政府は、負担の分散による社会保障料金の改革や、エンドユーザコストの見直し、税制改革などを行う必要がある。
2. コロナ禍対応の財政政策の透明性の確保
新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる経済危機に対して日本政府がとった財政支援策は大規模なものであった。これらの対策を実施する上では、透明性・監視性・連携性を充分に考慮した調整手法の確立が重要である。
3.デジタル技術の導入
デジタル技術を活用することにより、行政コストや業務プロセスの改善、国民に対するサービス向上、金融事業への新規参入など、様々なメリットが期待できる。これらのデジタル化施策を推進することで、財政改革においても、大きな貢献が期待できる。
結論
日本の財政政策が抱える課題を解決するためには、政府は、補助金・削減策に加え、社会保障財源の確保やコロナ禍対応の財政政策の透明性確保、デジタル技術の導入に注力すべきである。さらに、投資促進施策や人口減少に対する対策など、成長戦略の一層の推進も必要である。これによって、長期的な持続可能性のある財政政策を実現し、経済の安定性を保つことができると考えられる。