双極性障害について何をすべきか
近年、うつ病により仕事や学業から離れざるを得ない人が増えている。このような潮流に合わせ、うつ病への理解が深まっていて、うつ病を身近に思う人も増えているだろう。厚生労働省のデータによれば、一生のうち100人に約6人が罹患するとのことである。このように、うつ病についてはよく知られるようになったが、うつ病と似ていながらあまり知られていない病気が存在する。それが躁うつ病、別名双極性障害である。双極性障害は、1000人に4-7人が罹患するとされていて、うつ病よりは少ない。しかし、双極性障害はうつ病患者の症状が転じて罹患することもある、決して他人事ではない病気でもある。今回は、双極性障害とはそもそもどんな病気か、どのように治療するのか、近親者が罹患したときどのように接したらいいのかなどを見ていく。
まず、双極性障害とは、躁状態と鬱状態が繰り返す病気のことである。躁状態とは、多動になり、抑制が効かなくなる状態のことである。活動が活発になり、睡眠時間も短くなり、感情が激高することが増える。後先を考えない高額な買い物をしたり、性的逸脱行為に走ったりする。反対に鬱状態では、自己評価が低くなり、睡眠障害や摂食障害、希死念慮が起こりやすくなる。これら二つの状態が、数年単位で入れ替わる病気のことを双極性障害と言う。双極性障害は、まず薬物療法が行われる。炭酸リチウムを中心に、気分安定薬などが投与される。睡眠障害がある場合は睡眠薬も処方される。うつ病の患者が双極性障害に転じることがあると先述したが、これは薬の誤投与による。双極性障害の患者の鬱状態だけに目を向け、うつ病と判断し抗うつ剤を投与すると、躁転が起きてしまう。躁転とは、鬱状態から躁状態に変わることを指す。そのため、双極性障害の患者に抗うつ剤を投与することは禁忌とされる。では、近親者が罹患した場合、何を気を付けるべきなのだろうか。双極性障害の症状を知り、否定しないことがまずは必要である。また、躁状態で向こう見ずな行動が続いたり、鬱状態で自殺未遂が続いたりした場合に入院措置を取ることも必要である。また、双極性障害の患者は、体力に無理がきかないこと、夜更かしなどの不規則な生活をしてはいけない。このような行動をとると、双極性障害の症状が強く表れてしまう。そのため、規則正しく無理のない生活をさせるよう心掛けるべきである。
以上が双極性障害の概要である。うつ病より罹患者は少ないものの、うつ病と誤診されることもあり、気づいていないだけで身近な病気であるため、うつ病同様に人々の理解が深まっていってほしい病気である。また、近親者も行動を否定せず理解し、必要な措置を取っていってほしいと思う。
参考文献
・加藤忠史、双極性障害、ちくま新書、2019
・京都大学心理学連合編、心理学概論、ナカニシヤ出版、2016、302-304
・水島広子、対人関係療法でなおす 双極性障害、創元社、2010
・厚生労働省、知ることからはじめよう~みんなのメンタルヘルス~、うつ病、https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_depressive.html
・厚生労働省、知ることからはじめよう~みんなのメンタルヘルス~、双極性障害(躁うつ病)、https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_bipolar.html