ロールプレイと言われると、ロールプレイングゲームなどといった使い方が身近ではないだろうか。ロールプレイイングゲームの意味は、主人公の役を演じるゲームのことを言う。すなわちこの「ロールプレイ」とは、「役割を演じる」ということである。本論文では日常的にロールプレイングがどのように役立っているのかを考察する。
生きていれば、様々な状況に直面する。例えば受験の面接に備えたトレーニングだ。面接試験の前に、学校の先生などに面接官役をしてもらい、実際の面接で聞かれそうな質問を聞いてもらって本番に備えるといったトレーニングをする。面接の場面だけでなく、看護師のトレーニングにも同じことが言える。実際の看護師が、看護師役と患者役に分かれて、処置を受けているときの患者の気持ちを考えるといったシミュレーションをする。この時、学校の先生は面接官になりきり、看護師は、患者になりきる。このなりきりに何の意味があるのだろうか。なりきることで、実際に体験するであろう状況に「前もって」直面することができる。同じような状況で行ってみることで自分の苦手な分野や弱点などがわかる。そして、相手の役をやる場合には、相手の立場に立つことができるので気持ちがわかる。この「なりきり」つまり「ロールプレイング」は、マインドリーディングに役立つと考えられている。古見(2013)によると、マインドリーディング(mindreading)とは、知覚的にアクセスできる社会的刺激を処理し、直接知覚することが難しい隠された考え、望み、知識や意図に到達することである。つまり、他者の心を理解する能力を培うことに役立っているのだ。古見(2013)の研究によると、ロールプレイのどのような要素がマインドリーディングのどのようなプロセスを活性化したのかという点については明らかにされていないものの、ロールプレイによって、社会的な体験を蓄積することで、他者視点を理解し意図を読み取るというマインドリーディン グの能力が活性化し、より少ない認知コストで正確に素早く他者の意図理解が可能になるということが示された。福祉の場面では「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」というトレーニングも採用されている。
よって、面接の練習や、看護師のトレーニングなどに用いられるロールプレイングは、日常生活でも必要不可欠なスキルであるマインドリーディングに役立つと言える。
【参考文献】
古見文一. (2013). ロールプレイ体験がマインドリーディングの活性化に及ぼす効果の発達的研究. 発達心理学研究, 24(3), 308-317.