犯罪心理学の内容
犯罪心理学と聞くと何を研究している学問だと思うだろうか。犯罪者の心の中を研究する学問と思われがちではないだろうか。もちろん、犯罪に至るまで、犯行時、犯行後の心理を研究するのも犯罪心理学の内容の一つである。しかし、それ以外にも犯罪心理学が扱う内容がある。
犯罪心理学は、犯罪者についても研究するが、目撃者や証言をする人、捜査する立場の人々についても研究する。例えば、どのような事情聴取をすればより信頼できて正確な証言が得られるかなどが研究されている。取り調べでは、わずかな言い回しの違いによって証言が変化してしまうことが明らかになっている。また、虚偽の自白がどのようにして生まれるか、幼児の証言は信用できるかなども議論されている。前者に関しては、事件の内容を繰り返し聞かせることによって、無実の容疑者であっても、容疑者の中でその話が真実の記憶となってしまい、虚偽の自白をするケースがあることが分かっている。このように、馴染みのありそうな話を聞かせて虚偽の記憶を生成する方法をDRM法と呼ぶ。後者に関しては、Kassinらによって、幼児は大人よりも暗示や圧力など社会的影響を強く受けやすいということが明らかにされている。また、もちろん犯罪者の心の中についても研究する。そのテーマとして、福島章は著作『犯罪心理学入門』の中で『犯罪を犯す人びとと犯さない人びとの間には、心理学的特性の違いがあるのかどうか(原文ママ)』を見極めることを挙げている。精神疾患がある人が罪を犯し、責任能力がないとして罪を問われないケースを聞いたことがある人は多いだろう。ここで言う精神疾患とは、主に統合失調症であり、幻覚や幻聴に悩んだ末に犯罪に走るケースが多い。また、アルコールや薬物依存者による犯行もある。ニュースではこのような精神疾患者による犯罪が取り沙汰されがちではあるが、実際の犯罪における精神疾患者による犯罪の割合は低い。古いデータだが、昭和55年では精神疾患者による犯罪は1.26%で、当時の一般人口における精神疾患者の割合とほぼ同じである。妄想や幻覚に取りつかれながらも、精神疾患者による犯罪がそう多くないことは知っておくべきだろう。
犯罪心理学は、犯罪者はもちろんその周辺についても研究していることが分かっただろう。冤罪を生まないためにも、証言者や法曹に対する研究も必要である。また、犯罪を減らすために、犯罪者を研究してこれ以上増やさないための環境を作るための活動も重要だろう。
参考文献
・京都大学心理学連合編、心理学概論、ナカニシヤ出版、2016、346-347
・福島章、犯罪心理学入門、中公新書、2008、36, 96-145