グループでの話し合いで意見が傾く理由

決断を行わなければいけない場面は日常生活でも多々存在する。一人で決断するときと、多数の人間と話し合って決断するときでは違いがある。後者の決断を集団意思決定という。本論文では、この集団意思決定によってもたらされる意見の傾きがなぜ起こるのかを考察する。

グループの中の多数派が、リスクを犯しても良い結果を得たいと思っていると、話し合いの結果も多数派の方へ傾く。リスクが高い方へと話し合いが傾いてしまうことを「リスキーシフト」という。だが、必ずしも危険な方向へと傾くとは限らない。例えば、ある人が心臓病になったとする。この病気で死ぬことはないが、食べ物に気を遣ったりやめなければならないことが増える。手術をすることで病気を治すことも可能であるが、失敗すると死んでしまうリスクもある。このような話し合いで、最終的なグループの意見が「手術の成功率が高くない場合は避けるべきである」となった場合、「手術をする」でも「手術をしない」でもない意見となる。このように、グループの中の多数派が、危険を犯すべきではないと考えている場合でも話し合いの結果も多数派の意見に傾きがちである。これを「コーシャスシフト」という。

つまり、話し合いの結果は、危険な方向へも、堅実な方向へも傾く可能性があり、多数派の意見に傾きがちである。このようなものを集団極化と言い、個々人のもともとの意見や判断の支配的傾向が、討論などの集団経験を経た後、さらに強められる現象をいう(上野・横山,1982)。集団極化には情報交換と社会的比較が関わっていると言われている。情報交換の面から述べると、多数派の方が意見を言えるため少数派よりも多数派の方へ傾き、社会的比較の面からは多数派の意見の方が社会的に良いと思ってしまう傾向があると述べることができる。上野・横川(1982)の研究によると、意見の変化が大きいほど、その意見に対する確信の度合いが高くなる傾向がみられた。つまり、意 見 ・判 断の極化が大きいほど、極化の強度も大きく、集団極化現象のメカニズムとして、能力比較を基礎とした意見の比較が起こり得ることを示した。そして、比較対象の他者の能力が自分より高い条件よりも類似した条件において、よりリスキーな方向への意見の変化、すなわち集団極化が生じやすいという結果となった。

これらのことから、多数派に意見が傾くことはよくあることではあるが、意見の集団極化は話し合いに多数派と少数派がおり、多数派の影響力が強いときに強く起こると言える。

参考文献

北村 英哉 心理学辞典 2020  246-254

上野徳美, & 横川和章. (1982). 集団極化現象における社会的比較の役割. 実験社会心理学研究, 21(2), 167-173.

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