厚生労働省によると、現代の日本は、終戦直後の 1945年に 7,215 万人であった人口は、その後、ほぼ一貫して増加し、1967年には 1 億人を突破し、2008年には 1 億 2,808 万人とピークに達した。その人口の推移の中でも高齢者の割合が増え、超高齢化社会へと推移した。認知症や介護など様々な問題があるが、本論文では、高齢者の幸福の要因となるものについて考察する。
高齢になると仕事を終え自分の時間が増える。その時間を趣味に費やすと考えれば良い生活を送っていると考えるかもしれない。しかし、高齢になると言う事は、良いことばかりではない。物忘れが始まったり、体が思うように動かなくなったり、それに対してもどかしさを感じ怒りっぽくなることもあるだろう。そして高齢期には大切な人を亡くしてしまうこともある。さまざまな喪失を体験するわけだが、高齢者は不幸なのだろうか。心理学の研究では高齢者は、身体の機能が下がっても幸せだとする研究がある。高齢になるほど、男性では否定的な感情が減少し、女性では肯定的な感情が増加すると言う傾向が見られた。85歳以上の超高齢期には身体機能の低下が著しいが、主観的幸福感は維持される。なぜ幸せでいられるのか。それは歳を取るにつれ、心理的に適応する加齢効果であるとする説がある。これは、人は歳をとるに従って、その状況や環境に合うように行動や考え方を変えていくため心の幸せが保たれると言う考え方である。社会情動的選択理論によると、人生が有限であると認識したとき人は喜びや関心といったポジティブな感情を高める行動を選択するようになると言われている。有名な例を述べると、「コップに入った半分の水を見てこれだけしか残っていないと捉えるか、まだこんなに残っていると捉えるか」と物を見て注目することが違ってくるのと同じようなことである。高齢になるとみんな自然に幸せになるわけでは無いのではと言う疑問もある。高齢者の幸せには、個人の性格や人間関係など、様々な要因が関係しているといわれている。中高齢期になると、人は次の世代を育て自分の知識や技術を譲り渡してきたいというように心が発達すると考えられている。これを世代性の発達と言うが、この世代性が発達している人の方がより幸せであると感じていると言われている。
よって、世代性が発達している高齢者は、次の世代に譲る行動をとることで人生の終わりを受け入れられるということである。そしてこの次世代へ譲り渡していく行動、そして心が幸せの要因であると言える。
参考文献
・島津明人 心理学辞典 2020 p.632-659
・厚生労働省「厚生労働白書 (平成27年度厚生労働行政年次報告) ― 人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える― 」https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/16/dl/all.pdf(最終閲覧日:2021/12/07)
・内閣府「平成 23 年 8 月 29 日 幸福度に関する研究会」https://www5.cao.go.jp/keizai2/koufukudo/shiryou/4shiryou/2.pdf(最終閲覧日:2021/12/07)