ASDがもたらす仕事への支障
現在就労している人、これから働き始める人にとって、上司や同僚、取引先とのコミュニケーションや良好な人間関係の構築はかなり重要である。それらが上手く機能しないと、業務が円滑に回らず、トラブルの原因となりうることがある。ASDの特性を持つ人にとって、コミュニケーションと人間関係の構築は苦手分野である。このような特性を持つ人が事においてどのような支障をきたすのかを述べていくこととする。
ASDとは別名「自閉スペクトラム症」とも呼ばれ、厳密には自閉症・高機能自閉症・アスペルガー症候群などを含めた障害の総称である。精神科医の福田真也氏は「コミュニケーションの障害~言葉の表面の意味しか分からない、社会性の障害~常識が乏しく集団の中でうまくいかない、想像性の障害と固執傾向~同じ状況へのこだわりが強く新しい状況に適応しづらい、の三つの障害(提唱した研究者の名からWing の三つ組の障害という)を持つ人たちである。それ以外にも特定の音や触覚、気温 / 湿度などの環境に対しての感覚過敏を持つ人も多い。自閉症とアスペルガー症候群の関係は議論があるが、多くの研究者が本質的には同じ病理に基づく障害で「自閉症スペクトラム(ASD)」という連続する一つの障害としている」(※1)と述べている。具体例をあげると、「同僚や上司との距離感がわからず、いい関係を築くことができない」、「コミュニケーションを取るのが苦手で、報連相が少ない」、「指示を受けても要点を捉えていない」などがある。更に言葉選びにも難があり、「ネガティブな印象を与える言葉をそれと知らず使ってしまう」などがある。主に人との距離感やパーソナルスペースが独特なのである。ASDの特性がある人が「自分は全く悪気がなかった」と思っていても相手を不快にさせてしまうのである。こういった空間認知の苦手はASDの特性を持つ人が仕事でのコミュニケーションに支障をきたしてしまうのである。
上記に記載したように、ASDの特性を持つものにとって対人関係は大きな課題であることがわかる。社内のコミュニケーションなら未だしも、営業等で社外でこういった特性が出てしまうと、取引停止などの重大な問題になりかねない。円滑な業務をするためには、周囲のサポートも大切だが、ASDの特性を持つ者、自分自身の自覚と注意が必要である。
【参考文献】
※1 「大学生や成人の発達障害の問題と支援」、福田真也、2014年(http://www.joted.com/journal/v14paper.pdf)