財政政策と金融政策の歴史

 不況期に国家が行う景気刺激策には2つの種類がある。財政政策と金融政策である。財政政策と金融政策のどちらに重きを置くかは景気変動の波を大波にしないために重要である。現在でも、どちらが有効なのか論争が繰り広げられているとされている財政政策と金融政策の歴史について考察してみる。

 財政政策とは、政府がある目的のために政府支出や資金調達手段をコントロールすることであり、※1金融政策とは、中央銀行が貨幣の供給量をコントロールすることである。※2

 財政政策の一環としてイギリスの経済学者ケインズ(1883〜1946)が提唱した景気刺激策がある。資本主義と自由経済を前提とした国家による経済介入を唱えたのだった。

 ケインズ理論と呼ばれるその理論の中心をなすのは有効需要論である。有効需要論は、不況時には減税をし公共事業により雇用を創出すると景気が上向くとするものだ。※3有効需要論を基にしたニューディール政策の成功により、ケインズの主張が支持されるようになる。1929年の世界恐慌後にアメリカでニューディール政策が行われ実証された形となり、第二次世界大戦後には世界各国で採用されるに至った。※ 4

 ところが、これらの財政政策が効かなくなる不況が認められるようになると、新たな景気刺激策が提唱されるようになった。ケインズの財政政策の後に提唱された金融政策の一環は、アメリカの経済学者フリードマン(1912〜2006)※5によるものだった。

 不況時には財政収入が減るので減税や公共投資を行うと財政赤字が発生するといった理論である。減税は政府の収入が減り、公共投資は支出が増えるからだ。加えて、国家が無理やり需要をつくることによって、スタグフレーションが恒常化するとされている。※6

 1970年代後半以降、フリードマンはケインズを批判し、マネタリズムの立場を唱えた。フリードマンらをマネタリストと呼ぶのだが、政府の経済政策を金融政策に限定し積極的財政政策を否定したのだった。※7フリードマンたちの考え方は新自由主義とも呼ばれている。イギリスのサッチャー首相によるサッチャリズムやアメリカのレーガン大統領によるレーガノミクスなどに影響を与えたのだった。※8

 好況・不況の波はまさに予測が不可能であり、原因と有効な対策が時代により異なっている。財政政策と金融政策の歴史は、不況が訪れる度に新しい経済理論が生まれていく過程といっても過言ではないのだろう。

※1『新経済学ライブラリ=3マクロ経済学第2版』2009年2月10日浅子和美加納悟倉澤資成株式会社新世社(株)中経出版p.22l.21〜l.22

※2『新経済学ライブラリ=3マクロ経済学第2版』2009年2月10日浅子和美加納悟倉澤資成株式会社新世社p.23l.24〜l.25

※3『決定版センター試験倫理、政経・経済の点数が面白いほどとれる本』2011年6月8日奥村薫(株)中経出版p.294l.2〜l.4

※4決定版センター試験倫理、政経・経済の点数が面白いほどとれる本』2011年6月8日6奥村薫(株)中経出版p.294l.23〜l.25

※5 https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%B3

※6決定版センター試験倫理、政経・経済の点数が面白いほどとれる本』2011年6月8日奥村薫(株)中経出版p.295l.2〜l.5

※7『決定版センター試験倫理、政経・経済の点数が面白いほどとれる本』2011年6月8日奥村薫(株)中経出版p.295l.5〜l.9

※8『決定版センター試験倫理、政経・経済の点数が面白いほどとれる本』2011年6月8日奥村薫(株)中経出版p.295l.8〜l.10

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