コンプレックスの意味
心理学・精神医学の分野でいうコンプレックスとは、人の無意識の領域にある、苦痛・恐怖・欲求・羞恥心・記憶などさまざまな心理的要素が複雑に絡み合った情動の集まり。最初に提唱したのは心理学者のユングである。コンプレックスは、人が普遍的に抱くものもあるが、心的外傷体験が中核になり形成される。例えば幼少期に受けたDV体験により、目上の人間に過剰な反応をしてしまう、というのはこれにあたる。人の心には、自分でわかる顕在意識と、自分ではわからない無意識の領域があり、コンプレックスはふだん顕在意識の下に抑圧されているが、意識の領域と隣接しているため、意識の領域に侵入してきては現実の行動に影響を与える。例えば、過去に人前で演説をした際に大失敗をしてしまい、それからは人前で発言をする場面になると急に冷や汗が出てくる、といった現象はコンプレックスが、顕在意識の中にある自我に働きかけているからである。また、現実ではひどくつらい状況にいるのに、大笑いするようなとても楽しい夢を見るといった肯定的な働きもある。日本では一般的に、劣等感という意味でコンプレックスを使うが、これは精神科医アドラーの提唱した劣等コンプレックスという理論が日本人にとって馴染みやすい内容だったためだと考えられている。
例文
カウンセリングにおいて、クライエントのコンプレックスを理解するのに夢がヒントになることがある。