固定為替相場制と自由変動為替相場制の違いについて

 アメリカの経済学者であるミルトン・フリードマンは、1976年にノーベル経済学賞を授与された。授与の対象となった論文のタイトルは『消費分析・金融史・金融理論の分野における業績と、安定化政策の複雑性の実証』である。フリードマンは、固定為替相場制の危機を予測し自由変動為替相場制を提唱した。また、自由経済と小さな政府を擁護したことでも有名である。※1

 固定為替相場制と自由変動為替相場制のメリットとデメリットを簡潔にまとめてみる。 

 固定為替相場制とは、外国為替相場の変動を全面的に認めないか、もしくは、ごく僅かの変動幅しか認めない制度である。典型的な例として、金本位制度下の為替相場制度が挙げられるであろう。※2

  自由変動為替相場制とは、原則として外国為替相場の変動を市場の自由に委ねることで成り立っている為替制度である。為替相場を市場原理により変動させるのであるが、政府が直接これに拘束を加えることはない。※3

 異なる通貨の交換比率を為替相場と呼ぶ。金本位制の時代には通貨を発行している国家が何らかの要因で信用を失うと金への交換が殺到し金が流出してしまう。このような現象が世界恐慌の後に起き、金本位制は崩壊するに至った。為替が大混乱し、第二次世界大戦が勃発する経済的な要因として挙げられているのだ。※4

 第二次世界大戦後のブレトンウッズ体制は、アメリカドルを基軸通貨とした固定相場制を導入した。しかし、多くの国家がアメリカからの輸入品に支払うアメリカドルの不足を経験した。ドル不足の問題が解決すると、アメリカをドル危機が襲うこととなる。この頃になると、輸出入にドイツマルクや日本円が世界的に必要とされてアメリカドルを基軸通貨とする固定為替相場制の維持が難しくなった。ドルの切り下げが起こるのではと言われるようになる。※5

 ケインズの指摘によると、基軸通貨国の国際収支が黒字ならば基軸通貨が不足する国々が出てくる。反対に基軸通貨国の国際収支が赤字ならば基軸通貨への信頼が低下するとする。いわゆる、国際流動性ジレンマ、が発生するのだ。※6

 フリードマンが提唱した自由変動為替相場制においては、為替相場の乱高下が予測された。為替相場の乱高下は、国内の生産や雇用および物価に悪影響を与える。よって、国家の中央銀行が積極的に介入することが求められるに至った。現在の自由変動為替相場制は、管理された変動相場制、と呼ばれている。

 為替相場は、国家間の輸出入取引に必要不可欠な制度である。それゆえに、問題が生じるたびに形を変えて今日に至った。金本位制が大戦を勃発させる遠因になったことは否めない。また、戦後の世界経済に対し為替相場に求められてきた役割は、輸出入の安定である。輸出入の安定は、国家の経済の安定にもつながり、経済発展の礎にもなる大事な要素でもあるのだ。

 

※1ゼミナール経済学入門2008年9月8日日本経済新聞社福岡正夫p.440

※2 有斐閣経済辞典 固定為替相場制 p.407

※3 有斐閣経済辞典 自由変動為替相場制 p.548

※4 蔭山克秀、大学入試蔭山克秀の政治・経済が面白いほどわかる本、(株)中経出版、2008年、p.327〜p.328

※5  奥村薫 決定版!倫理、政治・経済の点数が面白いほどとれる本(株)中経出版 2011年6月8日p.411〜p.412

※6ゼミナール経済学入門2008年9月8日日本経済新聞社福岡正夫p.541ℓ.6~ℓ.13

参考サイトWikipedia『ノーベル経済学賞』※ノーベル経済学賞受賞者のピックアップのためにのみ参考にしたhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6%E8%B3%9E

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