世界の基軸通貨にはアメリカのドルとイギリスのポンドなどがある。そのなかで最も強い基軸通貨がドルとされている。そのため多国間貿易の決済で用いられるのがドルであり、いわゆるドル建てと呼ばれる決済方法なのだ。最強の基軸通貨と位置付けられるドルだが、そのことがアメリカを有利にするのか疑問点が残る。基軸通貨と輸出入の関係性を基に結論を導く。
基軸通貨とは、国際通貨とも呼ばれ国際間の決済に広く用いられる通貨のことを指す。また、基軸通貨は準備通貨として別の意味を持っている。別の意味とは、対外支払準備として各国が保有するということである。強い通貨なのでできることだ。(※1)
第二次世界大戦の勃発に関して世界経済の冷え込みが要因のひとつとされた。そこで、大戦終結後にIMFとGATTが設立されたのだ。これら大戦終結後の経済体制は、1944年に設定されたブレトン=ウッズ協定によっている。IMFとGATTが目指した世界は、通貨体制と自由貿易体制が確立された世界であった。
ドルはアメリカの通貨である。国際的地位の高いドルという基軸通貨は、ドル建て決済に用いられる。為替相場には固定相場制と変動相場制がある。固定相場制とは、為替レートを固定した制度であり、変動相場制とは、為替レートを市場原理に委ねるため常に変動している制度のことだ。ここで重要となるのが基軸通貨である。(※2)
各国の通貨は、金との兌換を保証された基軸通貨であるドルにより自国通貨の平価を決定されるからだ。(※3)
大戦終結後の日本は発展途上国とみなされ、固定相場制によるドル建て決済を主としていた。しかし、高度経済成長により固定相場制では海外輸出する日本側に有利で対外輸出国のアメリカにとって不利との結果がでたのだった。当時、1ドルが360円であると固定されていたのだが、これにより日米間の貿易収支は不均衡となる。円安ドル高は日本からの輸出に有利だったからである。アメリカの対日貿易収支は赤字に、それに対して日本の対米貿易収支は黒字となったのだ。その結果、1985年のプラザ合意によりドル安・円高に誘導する合意がなされるに至る。(※4)
ドルを基軸通貨とするドル建て決済は、ドルを通貨とするアメリカに有利だとは言えないと考えられる。プラザ合意後、日本はバブル景気という好景気に突入し日米間の貿易収支は改善しなかった。そこで取られた政策が関税をかけることである。IMFや現在において発展的解消となったGATTの当初の目的は達成されなかったのである。(※5)
(※1 )有斐閣経済辞典第3版p.381国際通貨
(※2)蔭山克秀、大学入試蔭山克秀の政治・経済が面白いほどわかる本、(株)中経出版、2008年、p.328〜p.329
(※3)ゼミナール経済学入門
2008年9月8日日本経済新聞社福岡正夫p.540〜p.541
(※4)蔭山克秀、大学入試蔭山克秀の政治・経済が面白いほどわかる本、(株)中経出版、2008年、p.276
(※5)蔭山克秀、大学入試蔭山克秀の政治・経済が面白いほどわかる本、(株)中経出版、2008年、p.276