日本的経営における終身雇用について

日本的経営における終身雇用について

 経営学を学ぶには、まず日本的経営について知っておくとスムーズに学ぶことができる。日本的経営は、「企業別労働組合」、「年功序列型賃金」、「終身雇用」の3つである。これらは、「日本的経営の三種の神器」とも呼ばれている。ここでは終身雇用についての現状と課題を取り上げる。

 終身雇用とは、正社員として採用した場合には会社や個人がよほどのことがない限り定年まで雇用するということである。雇用契約を結ぶ際には契約期間を記載しなければならないのだが、正社員採用の場合は、期間の定めなしとなっているのが一般的である。終身雇用制度は戦後の日本経済と共に成長してきた。しかし、今はこれが崩壊しているといわれている。これは本当だろうか。2019年10月の日本自動車工業会の会見で、トヨタ自動車豊田社長が「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べた。日本でトップ企業のトヨタ自動車社長が発言した言葉であるので、当時はかなりの衝撃を与えた。また、転職市場が活発であるため、終身雇用制度の維持は必要でないとの考えもあり、現在の日本では困難なのではないかという意見もある。しかし、一方で労働者側のデータでは一つの企業で勤めたいと考えている人、つまり終身雇用制度を希望している人が多くなっている。厚生労働省職業安定局が発行している「我が国の構造問題・雇用慣行等について」*1の情報を見てみると学卒後に入職後同じ企業に勤めている割合は5割程度いるという結果が出ている。長期的な視点で見ると減少傾向にあるがそれでも5割程度の数字が出ている。また、独立行政法人労働政策研究・研修機構の「第7回勤労生活に関する調査」結果の数字も引用する。この調査によると、終身雇用を支持する割合は過去最高の87.9%となっている。1999年の72.3%に比べて15ポイント以上上昇している。*2

 これらのことから分かるように現在の日本では、終身雇用制度が未だに残っており崩壊とは言えないのではないだろうか。確かに昨今、転職市場が活発である。しかし、不景気が続いており安定志向が強い現在でかつ日本独自の採用システムである新卒一括採用が無くならない限り終身雇用制度は無くならないのではないだろうか。

*1 平成30年6月29日 厚生労働省職業安定局 「我が国の構造問題・雇用慣行等について」 21ページ

*2 平成28年9月23日 独立行政法人 労働政策研究・研修機構 「第7回勤労生活に関する調査」1ページ

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