野生児研究の意味
野生児研究とは、人間社会から隔絶されたまま成長した野生児 (feral child) を人間が発見し、その後彼らが人間社会に適応するために教育を受けた際の過程や結果を観察・記録した研究である。18世紀末のフランスで発見された推定12歳の男児ヴィクトール(通称アヴェロンの野生児)や、1920年にインドで発見された推定8歳のカマラと推定1歳のアマラの姉妹が有名な事例である。
どちらの事例も、発見された当時は人間的な行動様式を持たなかった野生児が、養育者の教育によって人間的な行動様式を獲得したことが示されているが、言語発達の面での回復はあまり見られなかった。これらの結果は、人間的な発達における環境的要因の影響力を示していると考えられている。
一方で、野生児研究の記録の信憑性への疑いや、野生児が元々障がいを持つ子供であった可能性などが論じられており、研究結果の解釈には疑問が残るとされている。
例文
・野生児研究は、アマラとカマラの事例を基にした『狼に育てられた子』の出版で有名になった。
・野生児研究によって、環境的要因が人間の発達に与える影響の大きさが示された。
・野生児研究は特殊な事例の研究であり、ごく少数のデータしかないという欠点がある。
・野生児研究は、研究の判断や考察が養育者の主観に依拠しやすい。